Versailles, France
「もうそろそろ日本はもうダメだと言わなくてもよい このエントリーを含むはてなブックマーク」で述べたように日本は経済的には大成功しています。しかしながら、「怠け者同盟の社会は人類の未来 このエントリーを含むはてなブックマーク」で述べたように、怠け者同盟の社会というコンセプトを未来の社会とすると、日本の達成度は、低いと言わざるを得ません。

日本では、「ニートの海外就職日記」に書かれているようなブラックな会社が労働者に対し暗にサービス残業や休日出勤を強制しつつ、日本の製品の国際的競争力を押し上げているという側面もあります。過去、日本は限り無ない”自由”な競争によって全体の富を拡大するアングロサクソンモデル(米英)を忠実に踏襲してきたと言えます。

他国への波及なき怠け者モデルは机上の空論

日本で怠け者同盟の社会が達成できないのには、ハードワークを美徳とする風土や、労働力の低下を恐れる経団連の意向など、いろいろとあるとは思いますが、一番大きい問題として日本が自国の理念を他国に波及する力を持っていないことが挙げられます。「怠け者同盟の社会が働き者の社会に対抗する手段 このエントリーを含むはてなブックマーク」で述べたように、怠け者同盟の社会は、グローバルな競争において働き者の社会に勝つことはできません。対抗の手段は、1.仲間を募って同盟を拡大し、2.世界を説得する論理を創り出すことでした。「怠け者同盟の社会と働き者の社会の間の競争の中のフランス このエントリーを含むはてなブックマーク」に書いた通り、フランスは他国に理念を波及する放射型外交であるのに対し、日本の外交方針は妥協型外交です。日本はある問題を解決するために、自らを変える国だと言えます。

放射型外交のフランスと妥協型外交の日本
「妥協型外交」(politiques étrangères de compromis)とは、過去の経験が桎梏(しっこく)となり、世界との関係において何らかの思い切ったことをしようとする時に、国内のコンセンサス形成に困難が生じる国の外交をさしており、ドイツと日本がこれに該当する。(P.50)
日本では怠け者ルールを適応すると、グローバルな競争の中で一人負けを喫する危険があるのです。怠け者の社会が未来の理想と言っても、自国だけが貧しくなっていく恐怖に打ち勝てる国は無いでしょう。特に日本はその恐怖の強い国だと感じます。現状の日本においては、思い切った怠け者ルールの適応は不可能です。「ニートの海外就職日記」のスローガン”クソ労働環境を変える!俺たちの声で社畜の目を覚まさせようw!”の考え方には賛同しますが、根本的な解決は難しいように感じています。

実利重視の日本、思想から自由な日本

世界を説得する理念の構築と波及ができない日本では、グローバルな競争において一人負けする可能性のある未来の社会を、世界に先駆けて作ることは不可能です。しかし、この点が日本の長所でもあるのです。つまり、世界を説得する理念を持たない日本は思想から自由なために、一度コンセンサスを得れば、実利本位で自由に社会を改革することが可能です。日本人は世界のルールを素早く理解し、自らを変化させる能力が高いようです。

例を挙げると150年前、日本が開国したとき世界は、”進んだ文明が遅れた文明を教育することが人道的に正しい”と考えられた帝国主義の時代でした(「白人の責務」 (The White Man's Burden) など)。日本は西洋の決めたこのルール素早く理解し、自らを変化することにより開国からたった37年で日清/日露戦争に勝利を収めるまでになりました。善悪は別として、日本はこの時代のルールにおいて大成功を収めたわけです。また、60年前の敗戦後に西洋が決めたルールは、自由主義的な市場経済のルールでした。日本中が焼け野原になり0からの出発となった日本は、戦後約25年で国内総生産(GDP)で世界第二位になった後、ずっとその地位を守っています。日本はこの時代のルールおいても優秀なプレイヤーだったと言えます。

日本は、西洋が決めた西洋に都合のいいルールにおいて、成功することの出来た唯一の非西洋の国でした。日本は思想から自由なために、一度コンセンサスを得れば、その時代のルールに則って実利本位で自由に社会を改革することが可能な強みがあります。

怠け者の理想は「西洋に都合のいい口実」という側面

ひるがえって、未成年の劣悪な労働環境など、一定基準を満たさない新興国の労働環境を非難できる”怠け者ルール”は、既に先進国となった西洋が途上国の必死の頑張りによる追い上げを封じることのできる西洋に都合のいいルールとも言えます。人々がより幸せに生きるという人道に適った理念は、実は途上国の発展に足かせをかける途上国に不利なルールです。

過去を考えれば、150年前には”進んだ文明が遅れた文明を教育すること”が人道に適うこととされ、60年前には”自由主義的な市場経済によって全体の富を増大すること”が人々を幸せにすると主張されました。どちらも強者の西洋が、弱者のそれ以外の国を支配する試みだったと言えます。アジア、南米の台頭に危機感を覚えた西洋は、”怠け者ルール”を使って、またもや自分たちに都合の良いルールに変更しようとしている側面もあります。

何もできない日本、何もしなくていい日本

理念の構築と波及が苦手な日本、ルールの理解と適応が得意な日本、という二つの要素から導かれる結論は、日本にとって悪いニュースと良いニュースです。悪いニュースは、日本がブラックな会社に代表される劣悪な労働環境を劇的に改善するのは難しいという点です。理念の構築と波及ができない日本は、怠け者ルールで自国だけが貧しくなる恐怖に打ち勝てません。さらに言えば、日本が万が一、世界に先駆けて怠け者同盟の社会という先進的な社会を作り上げたとしても、世界を説得する論理を作れるとは思えないのです。世界の国々はその理念なしでは、日本に誕生した先進的社会を信用しないでしょう。せいぜい極東の島国で偶然成り立った社会だと見なすことでしょう。そして、他国に理念を波及できなければ、自国だけが貧しくなります。

良いニュースは、世界が怠け者同盟の社会の理念で統一されれば、日本は西洋に劣悪な労働環境を非難されることになり、”外圧”によって劣悪な労働環境からくる社会問題を解決できることです。劣悪な労働環境で生産された製品がEU市場から排除されるような事態になれば、どの企業も改革に乗り出します。さらに、150年前や60年前とは違い、日本は西洋と同じ強者の側にいる点も、見逃せない良いニュースです。ついでに、この解決法において、日本の政治家に期待する必要の無いことも、良いニュースと言えるかも知れません(泣)。

「外圧を待ち、それまで現状維持」が最善の策

ここで問題となるのは、何時の時点で”外圧”がかかるかということです。それは、分かりません。「怠け者同盟の社会と働き者の社会の間の競争の中のフランス このエントリーを含むはてなブックマーク」に書いた通り、将来、自由主義的な市場経済への風当たりが強くなった時や、非人道的な労働への圧力が強まったときなど、だと言えるだけです。

独力で世界を変える力の無い日本は、外圧を待ちつつ、国内の産業の国際競争力を維持するために現状の自由競争路線を維持するのが、取りうる最善の策だと思います。
  1. 怠け者同盟の社会のまとめ
  2. 怠け者同盟の社会は人類の未来
  3. 怠け者同盟の社会が働き者の社会に対抗する手段
  4. 怠け者同盟の社会と働き者の社会の間の競争の中のフランス
  5. 怠け者同盟の社会と働き者の社会の間の競争の中の日本(本エントリ)
  6. 怠け者同盟の社会の中で輝きを取り戻す日本
  7. 自由のスパイラルから脱出を目指す怠け者同盟
  8. 労働に対する社会の仕組みを試験に例える
  9. ベーシック・インカムよりも怠け者同盟の社会 このエントリーを含むはてなブックマーク
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Paris, France
今月は、12エントリを投稿して約71500PVで過去最高の月間PVを達成しました。といっても28-31日の4日間のアクセスが80%以上を占めているのですが。28日に公開した「もうそろそろ日本はもうダメだと言わなくてもよい このエントリーを含むはてなブックマーク」のエントリにはてなブックマークがたくさん付き興味を持った読者が来てくれたからでした。このエントリには現時点で過去最高の707個のはてなブックマークがついています。はてなブックマーク 週間ランキング(2009/7/25-2009/7/31)によると7月25日ー7月31日のはてなブックマークランキングで10位にランキング入りしています。また、TopHatenarの情報によると、この記事の反響のおかげで、RSS購読者、ブックマーク数共に倍増していることが分かります。RSSを登録してくれた方、ブックマークを付けてくれた方、コメントをくれた方、ありがとうございました。


feedburnerが示すRSS登録者は28日の記事の前には460人だったのですが、現在は400人ほど増えています。


先月始めたTwitterに加え、今月はFriendFeed でフィードにアクセスも始めてみました。ブログの記事を自動でTwitterに通知してくれる機能など便利なので気に入っています。

いつも通りアクセスが多かったエントリを公開します。このブログでは通常は昔に書いたエントリがランキングの上位を占めることが多いのですが、今月は半分が今月に書いたエントリでした。これからもこのブログをよろしくお願いします。
  1. もうそろそろ日本はもうダメだと言わなくてもよい
  2. 日本をもっとダメな国だと思い危機感を煽りましょう
  3. 第10回 Japan Expo Paris 2009行ってきました
  4. 日本はもうダメだ論と日本の優秀な人材
  5. フランス人から見た日本特集『Un oeil sur la planète: Japon : le reveil du sumo ?』(2/2)
  6. 日本はロボットで少子化問題を解決しようと思っている
  7. 日本人はなぜ悲観論が好きか
  8. 日本文化エロネタに対するフランス人の反応
  9. 怠け者同盟の社会は人類の未来
  10. フランス語のページをブラウザ上の仏和辞書を引きながら読む方法
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Paris, France
競争を抑制することによって、社会と構成員の負荷を減らし、減らした負荷を人の「幸福」のために使うようにするというコンセプトを、「怠け者同盟の社会は人類の未来」で紹介しました。その次に、怠け者同盟の社会が持つ、グローバル市場では働き者の社会に敗れる弱点を克服する手段について考察してきました。その手段とは、「怠け者同盟の社会が働き者の社会に対抗する手段」で述べたように、1.怠け者同盟の拡大と2.同盟の論理の構築というアプローチでした。この戦略は今のフランスに最も適したアプローチです。

世界に理念を波及させる国、フランス

ある問題を解決するために、自らを変化させる国が日本だとすると、世界を変化させる国がフランスと言えます。例えば”グローバルな競争が人間を幸せにしないこと”を日仏両国が気づいたとします。日本は、怠け者の社会というのがグローバルな競争において敗北を喫することを理解し、怠け者の社会を作ることを諦めるでしょう。しかし、フランスは違います。フランスは、怠け者の社会というのがグローバルな競争において敗北を喫することを理解し、世界のほうを変えようとします。なぜなら、「グローバルな競争が人間を幸せにしない」という信念が正しく、世界が間違っていると信ずるからです。フランスは自らの理念を通すために世界を変えようとする国です。最新の研究によると、日本の外交方針は妥協型外交、フランスの外交方針は放射型外交に属するそうです。
放射型外交のフランスと妥協型外交の日本
「放射型外交」(politiques étrangères de projection)とは、政治的、経済的、文化的な影響力を自国の領土の外に積極的に及ぼそうとするもので、威信や栄光、偉大さやパワーなどといった概念が重要視される。その典型とされるのは、米国とフランスである。(P.50)
欧州の中原にあるこの国では昔から異なる意見を持つ人々が交流してきました。仲間を募ったり、異なる理念を戦わせたりする中で理論を構築し波及する能力が優れるようになったのではないかと思います。

美しい論理の裏にあるフランスの国益

フランスが反論のしようのない美しい論理を構築するときは、多くの場合その背後にフランスの国益が潜んでいます。その点が、フランスのしたたかさであり、世界の国々に警戒されている点でもあります。

この場合のフランスの国益とは、既に先進国となったフランスが途上国の必死の頑張りによる追い上げを封じることにあります。アジアや南米などの台頭する新興国の労働環境を人権侵害と非難することで、労働において一定基準を満たさない新興国の製品を、EU市場から排除する可能性もあります。怠け者ルールの適応は先進国が途上国にかける足かせともなるのです。先進国同盟に都合のいいこのルールは、フランスが他の先進国に対して同盟への加入を説得する時にも役立つことでしょう。

怠け者ルールが同盟の拡大を困難にするジレンマ

1.怠け者同盟の拡大と2.怠け者ルールの適応が同時に達成できる目標だったら話は早いのですが、そうではありません。つまり、怠け者同盟において急激に怠け者ルールを適応してしまうと、怠け者同盟の社会が相対的に経済的に弱体化してしまいます。35時間労働、長期バカンスの国では生産、消費などの活動が抑えられます。怠け者同盟の市場規模が低下すれば、働き者の製品を排除する効果が薄れます。これは、怠け者同盟の社会であっても働き者の社会に対抗するためには、ある程度の競争力が必要なことを示します。”怠け者ルールを適応すれば同盟拡大の影響力が低下する”、”同盟を拡大するには一生懸命働き経済的に強くなり影響力を確保しなければならない”というジレンマです。

ジレンマの中での働き者の社会への揺り戻し

2007年のフランス大統領選挙はこのジレンマの中で、怠け者ルールの適応を加速するか、怠け者ルールがもたらすフランスの経済力の低下に歯止めをかけるかが焦点となりました。結果は、「もっと働き、もっと稼ごう (travailler plus pour gagner plus)」と主張したサルコジ大統領の勝利で幕を下ろしました。「怠け者同盟の社会が働き者の社会に対抗する手段」で述べた戦略は、フランス国民からその時点では夢想的すぎて非現実的だと捉えられました。現実路線のサルコジ氏の得票率が53.06%、未来の社会である怠け者同盟の社会を目指したロワイヤル氏の得票率が46.94%でした。大まかに言えばその時点での「怠け者同盟の拡大と同盟の論理の適応」というアプローチへの支持・不支持率だといえます。

2007年はサブプライムローンに始まる経済危機の前ですので、世の中は自由主義的な市場経済が頂点に達していた頃です。フランス国民にとっては未来の社会を目指していくよりも、米英の好況を目にして、自国の影響力の低下を無視できなくなったという側面がありました。現在、フランスは同盟の拡大と、同盟の論理による国際的フレームワークの構築を諦めていないように感じます。自国の理念を波及するには、それしか手が無いように見えるからです。将来、自由主義的な市場経済への風当たりが強くなった時や、非人道的な労働への圧力が強まったとき、フランスは世論の流れを見て怠け者が作る未来の社会の世界的展開に再び手をつけるでしょう。

以下のエントリを予定しています。
  1. 怠け者同盟の社会のまとめ
  2. 怠け者同盟の社会は人類の未来
  3. 怠け者同盟の社会が働き者の社会に対抗する手段
  4. 怠け者同盟の社会と働き者の社会の間の競争の中のフランス(本エントリ)
  5. 怠け者同盟の社会と働き者の社会の間の競争の中の日本
  6. 怠け者同盟の社会の中で輝きを取り戻す日本
  7. 自由のスパイラルから脱出を目指す怠け者同盟
  8. 労働に対する社会の仕組みを試験に例える
  9. ベーシック・インカムよりも怠け者同盟の社会 このエントリーを含むはてなブックマーク
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Paris, France
「怠け者同盟の社会は人類の未来」で述べた怠け者同盟の社会の持つ一番の問題点として、働き者の社会との競争に容易に敗北するということが挙げられます。怠け者同盟の社会では、週35時間しか働いていなくて、日曜日は店を開けることが禁止されています。一方、働き者の社会では24時間オープンのコンビニが氾濫し、人々は家族団らんの時間や読書・音楽といった文化的な生活を送る時間を削りながらも働いているので当然です。

働き者の社会は、熾烈な競争を通じて全体のパイを広げるアングロサクソン(米英)モデルとも言え、日本の社会も採用しているモデルです。当然、怠け者同盟の社会と働き者の社会の間の競争は、働き者の社会の完勝と言えます。普通に競争すると怠け者同盟の社会が競争に勝利することはありえません。

怠け者同盟の社会の弱点

怠け者同盟の社会の弱点は、国内市場で競争を抑制できても、グローバル市場では競争を排除できない点です。怠け者ルールを国内で徹底していても、怠け者同盟の社会がフランス一国であれば、フランスの産業だけの国際競争力が低下して、フランスだけが貧しくなります。フランスの製品の品質が低下するから、外国では売れません。

さらに、フランスでは35時間労働制や日曜日労働禁止など、競争をエスカレートさせないルールが設定されていて商売がしにくいため、工場が隣国に逃げていきます。なぜなら、外国企業が、工場を作ってフランス人を雇うにしても、怠け者ルールを適応されてしまいます。フランスで利益を上げようとするなら、隣国で製品を作ってフランス市場で売る方が利益が出ます。

当然フランスも、1.フランスの品質の低下によりグローバル市場でのシェアが低下する問題、2.産業が隣国に逃げ出していく問題に気づいています。

同盟の拡大を目指す怠け者同盟

そこで、怠け者の同盟を大きくして、怠け者ルールを適応できる範囲を拡大するアプローチが取られます。これが、このブログで怠け者同盟と「同盟」の二文字を加えた理由です。手始めはヨーロッパ27カ国からなるEUでしょう。フランスが一貫してEU議会のイニシアチブを狙っていく理由の一端です。

まず、この市場で競争がエスカレートしないようなルールを設定します。労働者が35時間以上働いた企業や、日曜日に開店した店舗を抜け駆けとして市場から排除します。現状だと、過労死が発生した企業や、サービス残業が横行している企業は格好のターゲットになるでしょう。こうして、拡大した同盟の市場から働き者を排除していきます。怠け者同盟の社会がフランス一国だったら、グローバル企業は、商売が難しいフランス市場を見捨てたかも知れません。それがEU27カ国となると話は違ってきます。ユーロ経済圏のGDPはアメリカのGDPを凌駕しています。簡単に諦められる市場規模ではありません。EUで商売をする企業はEUで通用するルールに則って商売するしかありません。

論理によって維持される怠け者同盟

同盟が分裂しないように維持し、強制力をもって働き者を排除する正当性は論理によってなされます。”エスカレートした競争がいかに人を幸せにしないか”、”競争を抑制した社会が人類の未来のあるべき姿”か、主張します。槍玉に挙げられるのは発展途上国の未成年の不当労働、過労死や過剰労働による鬱などです。これらが人間の基本的人権を踏みにじっていると主張します。

1789年、フランス人権宣言とも呼ばれる人間と市民の権利の宣言(Déclaration des Droits de l'Homme et du Citoyen)を高らかに宣言したフランスは、人権の母国としてのプライドを持っています。人がより良く存在できるための理念を率先して作るのは自分達だと思っています。発展途上国の悲惨な未成年の不当労働を持ち出して世論を動かし、反論することも困難なほどの論理をもって人権の範囲を拡大してくるでしょう。つまり労働の制限が人権に加えられようとしています。英語でもフランス語でもKarōshi(過労死)という単語が使われます。これは、日本に興味があるわけではなく(少しはあるかもしれませんが)、同盟の論理を強化する理由に使える可能性があると思って興味を持っていると思われます。

怠け者同盟の拡大と同盟の論理の今後の展開

現状では、過労死が発生した企業やサービス残業が発生している企業の製品であってもEU市場から排除する強制力はありません。このエントリでは怠け者同盟の社会が将来取りそうな方策をデフォルメして書いてみました。しかし、フランス社会党の元党首のセゴレーヌ・ロワイヤル氏が2007年の大統領選挙で訴えた、「国際的に人権を保護するフレームワークを各国協調で作り上げる」という構想は、拡大すれば以上に述べてきたような市場に競争を排除するフレームワークともなり得えます。

さらに、「競争の抑制によるソシアリスムの実現」にも書きましたが、昨今ヨーロッパで流行っている近い活動にフェアトレードの 考え方があります。これは途上国の製品を不当に買い叩かないという慈善的な意味合いを持つ活動ですが、労働に対して正当な値段を付けるというフェアトレードの考え方は、不当な労働に対しては許容しないという考え方に移行するかもしれません。未成年の過剰労働などを通じて不当な搾取によって作られた製品をEU27カ国の市場から閉め出したりすることが、将来可能になるかもしれません。世界の風潮と、怠け者同盟の取りうる戦略を考察するとそういった結論にたどり着きます。過激な競争によって製品の品質を向上させる日本企業は怠け者同盟の社会の動きに注目です。
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1.仲間を募って同盟を拡大し、2.世界を説得する論理を創り出すと言うのは、今の日本の苦手とするところです。今後は、この同盟のイニシアチブを握るフランスの状況を分析した後、日本の取りうる戦略について考察しようと思います。このブログでは、以下のエントリを予定しています。
  1. 怠け者同盟の社会のまとめ
  2. 怠け者同盟の社会は人類の未来
  3. 怠け者同盟の社会が働き者の社会に対抗する手段(本エントリ)
  4. 怠け者同盟の社会と働き者の社会の間の競争の中のフランス
  5. 怠け者同盟の社会と働き者の社会の間の競争の中の日本
  6. 怠け者同盟の社会の中で輝きを取り戻す日本
  7. 自由のスパイラルから脱出を目指す怠け者同盟
  8. 労働に対する社会の仕組みを試験に例える
  9. ベーシック・インカムよりも怠け者同盟の社会 このエントリーを含むはてなブックマーク
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Paris, France
日本はけっこう成功しているというエントリ(日本はもうダメだ論と日本の優秀な人材このエントリーを含むはてなブックマーク、日本をもっとダメな国だと思い危機感を煽りましょうこのエントリーを含むはてなブックマーク、もうそろそろ日本はもうダメだと言わなくてもよい このエントリーを含むはてなブックマーク」)には、必ず「いや、でも働きすぎて日本人の幸福度は低い」という反論があります。それに対する答えとして読んでいただけると助かります。
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フランスに来て思ったのは、やっぱりフランス人は怠け者だということです。1998年に政府の決めた週35時間労働制は、月曜日から毎日8時間働くと金曜日は午前中で帰宅できることになります。もちろん同僚は5時か6時で帰りますし、土日休日に働くことはあり得ません。24時間のコンビニはありませんし、日曜日に空いているスーパーもありません。だんだん分かってきたことは、フランス人は怠惰だからこんな社会になったのではなくて、怠惰でいられる社会を未来の理想として、意識的にこの社会を作り上げてきたということです。これを本エントリでは怠け者同盟の社会と名づけます。

サルコジ大統領はこの怠け者同盟の社会を働き者の社会に変えようとしていますが、反対者が多いです。

「日曜はダメよ」の仏店舗、営業解禁へ新法 : 国際 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

フランスで、これまで原則として禁じられていた日曜日の店舗営業を、大都市や観光地で解禁する新法が国会で可決された。政府は年内施行を目指しており、実現すれば観光客も買い物や飲食がしやすくなる。ただ、「もっと働き、もっと稼げ」と旗を振るサルコジ大統領肝いりの新法には、国民の過半数が「ノン」と拒否反応を示しており、野党は徹底抗戦の構えだ。

怠け者同盟の社会は競争を抑制し負荷を減らす

競争相手の会社や同僚も35時間労働で、日曜日は労働禁止だということになれば、誰もが安心して働くことをやめられます。仕事を休んでいる間にライバル店にシェアを奪われることも無く、休んでいる間に同僚と差がつくことも無いからです。さらに競争を抑制すると良いのは、労働によって得られる成果が競争していた時とそれほど変わらない点です。競争が抑制されていれば、必死に働かなくてもライバル店に勝てる可能性は減りませんし、出世できる可能性も減りません。このあたりは、「競争の抑制によるソシアリスムの実現」にも書いてあります。

減った負荷を「幸福」へとまわす

エネルギー資源、人的資源、労働時間などの資源を投入して経済的利益を上げる競争において、競争を抑制することで減った負荷を本当に社会と個人を「幸福」にする要素に振り分けていきます。エネルギー消費は減れば減るほど好ましいし、余った時間は、例えば家族の団欒を増やし毎日一緒に食事を取るとか、著名な文学作品を読んで感性を養うとかといったことに振り分けます。

プロジェクトが遅れ気味だろうが、やらなくてはならないことが終わってなかろうが、ヴァカンスは必ずとります。それが権利だからです。だから、やらなくてはならないことが終わってなければ、ヴァカンスなので出来ません、と言います。言われたほうは、それならばしようがないとなります。まるでヴァカンスは聖域のようにして、他人にも仕事にも何にも絶対に邪魔させません。フランスにおいては、基本的人権とは教育を受ける権利、自由に発言できる権利、自由に宗教を選べる権利に加え、ヴァカンスを取る権利が含まれているという冗談がありますが、それぐらいのものです。フランスでは、エスカレートした競争は人々を幸せにしないという信念みたいなものを感じます。

怠け者同盟の社会を試験で例えると

怠け者同盟の社会を試験で例えると以下のようになります。大学入学試験などの熾烈な競争の下では、「四合五落(4時間寝た者が合格し、5時間寝た者が落ちる)」といったことが起こりえます。競争がエスカレートするため、ライバルたちより睡眠時間を削る必要があります。怠け者同盟の社会は、これを8時間睡眠しないものは試験を受ける権利を失うというルールを設定したようなものです。つまり8時間睡眠したもの同士の競争になるため、競争は抑制されたものになります。

どのように受験者の睡眠時間を確認するかという問題は残りますが、ルールがしっかりと適応されれば公平な競争が行われます。つまり、自由に競争した時と同様に、より努力したものや、より試験を解く能力がある者が合格することになります。

働き者が罰せられる怠け者同盟の社会

怠け者同盟の社会の問題点は、より働きたいものが働けないという問題です。怠け者同盟の社会内の人々は、労働にかける時間を少なくし、あなたの「幸福」を増やすことを義務付けられています。働くことが私の幸福ですという論理は認められません。なぜならこれは、怠け者同盟の社会の中では抜け駆けになってしまうからです。

つまり、ライバルがみんな8時間睡眠している中で4時間睡眠にするような卑怯な抜け駆けです。競争を緩和するための8時間睡眠ルールは、試験勉強をしたくてたまらないような受験生には、強制的な8時間睡眠は苦痛でしかありません。家族団らんや読書、音楽鑑賞による人生の充実を強制されます。怠け者同盟の社会は働き者を罰する発想で作られています。

全体の「幸福」を増やす方法としての怠け者同盟の社会

どのような社会を作り上げていくとしても全体の幸福を増大させることが最終的な目的となります。怠け者同盟の社会は、圧倒的大多数が怠け者のフランス人たちが幸福になるために作られています。小数の働き者が罰せられるのは、全体の幸福のために無視される問題点があります。しかし、この社会では「ニートの海外就職日記」に書かれているようなブラックな会社というのは、抜け駆けとして市場から退場を迫られます。

競争によって、全員が必死に働かなくとも、今と経済的にほとんど変わらない生活が出来て、競争以外に使う時間がある社会が未来の理想というのは、異論が無いでしょう。少なくとも、未来の社会を考えていく上で、全体の幸福を増加する方法として、怠け者同盟の社会というアプローチがあることを知っておく必要があります。

このブログでは、以下のエントリを予定しています。
  1. 怠け者同盟の社会のまとめ
  2. 怠け者同盟の社会は人類の未来(本エントリ)
  3. 怠け者同盟の社会が働き者の社会に対抗する手段
  4. 怠け者同盟の社会と働き者の社会の間の競争の中のフランス
  5. 怠け者同盟の社会と働き者の社会の間の競争の中の日本
  6. 怠け者同盟の社会の中で輝きを取り戻す日本
  7. 自由のスパイラルから脱出を目指す怠け者同盟
  8. 労働に対する社会の仕組みを試験に例える
  9. ベーシック・インカムよりも怠け者同盟の社会 このエントリーを含むはてなブックマーク
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Deauville, France
一つ前のエントリ「もうそろそろ日本はもうダメだと言わなくてもよい このエントリーを含むはてなブックマーク」で「パスポートの威力」のくだりで不快感を持った方も多いかと思います。実際このくだりは最後まで文章に含めるか迷ったところでもありました。日本がうまくやっていると言うだけなら、「「世界にいい影響を与える国:ニッポン」を考える」や、「世界にいい影響を与える国:ニッポン」に書いていることの中のどれか取り上げれば済むことでした。しかし、結局は、エントリにある種の”どぎつさ”を演出するためにあえて加えておきました。

不快感を示された方、持たれた方は正しいと思います。人の価値は国籍、民族、宗教、さらに言えば受けた教育や人柄に関わらずみな同じだという世界の方が正しいと全員が納得できるからです。これは、異国に住む僕自身が一番信じたいことでもあります。フランスで住む上で、見た目がアジア人でも、片言のフランス語しかしゃべれなくても、フランス式の教育を受けていなくても、人としての価値は誰でも同じであると信じたいからです。

パスポートの威力

人は誰でもみな平等であるはずと思っていた僕がその命題を疑い出したのは、今から2年前、渡仏した2か月後のことでした。留学生達とお酒を飲んでいる席で、フランス国籍のことが話題になったのです。それが前のエントリの以下の部分に当たります。
「フランス国籍を持っていた方が何かと便利だから取りたい。今はヨーロッパの空港の出入りで面倒が多い」といいます。続けて、「日本のパスポートはフランスのパスポートと同じ威力があるから、お前には関係ないな」と言われました。
彼は同僚のパレスチナ人で、その能力も人柄も申し分ありませんでした。その彼が、以上のように言ったのです。さらには、「空港の検査でいつも個室に連れて行かれるのが耐えられない。フランス国籍は持てば便利だ」と言っていたのです。パスポートのpower(力)だかvalue(価値)と言っていたように記憶しています。

同僚なので同じように働いて同じように生活しているのに彼の目に見えている世界は、僕のものとはだいぶ違い衝撃を受けました。あまりの衝撃で、当時書いていた日記ではぼかして書いています→フランスで理工学: セーヌのほとりでピクニック。それでも、30分ほど続いたフランス国籍の話題が、遅れて参加したフランス人が来たとたんに終わったことなど、今でも鮮明に覚えています。

現実世界は平等ではない

人は国籍、民族、宗教に関わらず平等なはずなのにパスポートのpowerやvalueが違うなんて不公平じゃないかと考え始めました。でも考えてみればこの世界の仕組みなんて不公平にできていると思い当たります。ある者は生まれた瞬間から飢えに苦しむ運命にあったり、より良い生活をするための教育を受ける機会が得られなかったりします。さらに言えば、生まれながらにして、人類が脈々と築いてきた、水道、電気、ネットなどのインフラの恩恵を受けられない人もいます。

また、ある者は生まれた土地に石油が出るためにその利益で社会を高福祉にできたり、ある者は石油が無い国に生まれたために一生懸命に働く必要に迫られます。本当に平等な世界が実現すれば、石油や地球資源の恩恵は人類に等しく与えられるべきとも言えます。それに世界に重大な影響を与える決定を下すアメリカ合衆国大統領はアメリカ国民だけが選べます。これも不公平と言えば不公平と言えます。

国籍、国境をなくすのは現状では不可能

こう考えていくと、そもそも国籍や国境と言うのが不公平なものであるということに気づきます。多くの人が納得する「人はみな平等」という理念を満たそうとするなら、国籍のシステムは無くなるべきだと思います。もしくは少なくとも、人類全員が自由に国籍を選択可能にするぐらいはするべきでしょう。人類が十分に賢明だったら、将来はそういう方向に進むんだろうと信じます。しかし、現状ではこれは不可能です。どの国も養うだけの移民なんて受け入れたくないし、受け入れるとしても優秀な移民だけを受け入れている状態です。国籍を誰にでも解放するのは英断だと思いますが、僕が生きているうちには難しいような気がします。

これは、「おらのじっちゃんとおとうちゃんが耕した畑は、おらのもんだ。みんなで共有するなんてとんでもねぇ」と言うのに似ています。つまり、先人が努力のうちに切り開いた成果を、みんなで共有するのではなく、子孫である自分たちが独占したいという意志の現れです。個人の相続ですら子孫に受け継がれるのですから(税金分は国に取られてその国の皆で共有になりますが)、赤の他人の外国人に譲りたくないと言うことでしょう。国籍はその発想自体が排他的です。

そんなことを言ったって「人は平等だし、パスポートの威力に違いがあってはならない」という人は、国籍システムを壊す方法か、すべての国籍を全員に解放させる仕組みを考えてみてください。

背景に関係なく平等に人に接するのは最後の良心

人類が十分に賢明で国籍システムが無くなった暁には、後世の人は現在の人々のことを「排他的な国籍によって文明の恩恵を独占した野蛮な人たち」と考えることでしょう。国籍が排他的な仕組みであることは、比較的”良い”と言われている国籍を持つ人たちが感じていなくても、”悪い”国籍を持つ人は強烈にそのことを感じているはずです。不平等な国籍システムを認識せず、ナイーブに人はみな平等だと考えるのは無神経で、逆に相手を思いやれない弊害があるように思います。

個人の関係においては、国籍は関係ありません。国籍、民族、宗教、受けてきた教育にとらわれず、平等に接するべきだと思います。排他的なシステムで不平等に恩恵を得る者のいる現在の世界に生きる者として、それは最後の良心です。

追記:そういえば去年の12月に日本に帰った時にパスポートのことを茶化した歌が流行ってました。たいていの人は国籍の排他的システムに無関心なんだと感じました。
→一時帰国中の雑感「矢島美容室」 (1/2)
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Paris, France
日本はもうダメだ論には何回か違和感を表明してきました→(日本はもうダメだ論と日本の優秀な人材このエントリーを含むはてなブックマーク、日本をもっとダメな国だと思い危機感を煽りましょうこのエントリーを含むはてなブックマーク)。これらのエントリではいろいろな歴史の例を挙げて理論武装をしていますが、日本はもうダメだ論は読んだ瞬間から反射的に悲観的すぎると感じました。それは、ヨーロッパに住んでいる者としての肌感覚です。

自動車でも電化製品でもフランスでは日本製品は品質が良いという先入観があります。学校と研究所でお世話になっている3人の教授はみんなソニーのVAIOの最軽量モデルを使っています。この2年間の間に何回か買い替えていますが、いつもVAIOです。きっと気に入っているのでしょう。学生はもう少し安いPCを使っています。また、友人が自動車を買うと言う時に検討するのが、トヨタです。学生はお金がないので中古ですが、故障で余計に費用がかかるのは困ってしまうので、信頼性の高い日本車を選びたいと答えます。僕は旅が好きなのでフランスにいるうちにヨーロッパ各国をまわっているのですが、観光地に行った時に旅行者の持つデジカメとデジタルビデオカメラは少なめに見積もっても80パーセント以上は日本製です。

極東の島国である日本が遠くはなれたヨーロッパで信頼性を獲得して、日本製品をあふれさせています。EUは現在27カ国ありますが、どの国もこんな快挙を成し遂げている国はありません。これで、日本はもうダメだと言うのならば、ヨーロッパの27カ国はもう既に終わっていると言うことでしょう。ヨーロッパの国で多くの人がそう思っている国は無いです。控えめに見ても日本はうまくやっている方だと言えます。

日本人の能力と日本の努力の蓄積を過小評価している

日本がもうダメだと言う時はだいたい経済が取り上げられます。ヨーロッパの国々と比較するならば、日本経済は異常に絶好調と言えるくらいです。さらに言えば日本経済がもっともっと落ちぶれても日本は大丈夫です。150年前の開国以来、西洋の知恵を取り入れるようになってからの、たゆまぬ蓄積があります。水道網、電気、交通、ネットなどのインフラは世界最上位で、教育水準も高く、世界上位の科学技術を持つと言われています。僕の携わる高度交通システム(ITS)やロボットの研究では、技術調査というとアメリカ、EU、日本の技術動向を調べる習慣があります。いちおう今のところ、世界の3極のうちに入れてもらっているわけです。

フランス語をしゃべり途上国から来ている博士号を持つ研究者は、フランス国籍を取れる可能性があります。こういった研究者とフランス国籍を取るか取らないかの議論したことがあります。「フランス国籍を持っていた方が何かと便利だから取りたい。今はヨーロッパの空港の出入りで面倒が多い」といいます。続けて、「日本のパスポートはフランスのパスポートと同じ威力があるから、お前には関係ないな」と言われました。世の中は本当に不公平にできていると思います。日本も以前は今の位置にいたわけではなかったので、日本は長い努力の上に今の地位を得ていることも確かです。

インフラや教育水準、所得など平均的な国々と比べてとくに劣っているわけでもないのに、もうダメだと言うのは過去の努力を過小評価しています。

もしかして基準がアメリカなのか

「On Off and Beyond: 海外で勉強して働こう」では、「日本はもう立ち直れない、ベストケースはフランス型」ときているので、フランスはもう終わった国の中でまだマシな国という位置づけなのかもしれません。日本がもうダメだと言う時は経済の話が取り上げられるので、日本より経済がすぐれている国と比べているのでしょう。フランスが終わったとするとヨーロッパは、全体的に論外ですかね。やはり比較対象は必然的に、著者の住むアメリカなのではないかと思えてきます。

しかし、アメリカと日本を比べるのはまさに論外です。フランスのユベール・ヴェドリーヌ元外相は、「今のアメリカの勢力は、大英帝国を遥かにしのぎ、ローマ帝国に比肩する(参照)」と言っています。さらに同氏は1997年、以下のように言っています。

アメリカの帝国誘惑(The Imperial Temptation of America)

アメリカは他の国が持ったことのないほどの資産をもっている:政治的影響力、ドル通貨の優位、通信ネットワークの制御、”ドリーム・ファクトリー”、新技術。ペンタゴンとボーイングとコカコーラとマイクロソフトとハリウッドとCNNとインターネットと英語とをすべて足し合わせたこの状況は殆ど前例のないものである。
The United States has assets not yet at the disposal of any other power: political influence, the supremacy of the dollar, control of the communications networks, 'dream factories,' new technology. Add these up-the Pentagon, Boeing, Coca-Cola, Microsoft, Hollywood, CNN, the Internet, the English language-the situation is virtually unprecedented.
今だったら、Googleとかも入れても良いかもしれません。とにかく、アメリカと比べるのは間違っています。日本がどんだけ努力しても、間違っても数世紀で追いつけるような差ではありません。まあ、目指す人もいないでしょうが。

同じ比べるならアメリカの一州と比べましょう。例えば、一番経済の活発なカリフォルニア州はイタリアの国内総生産に匹敵するそうです(アメリカの各州はGDPでいうとどの国に相当するか? - IDEA*IDEA)。カリフォルニア州(総面積が日本とほぼ同じ、人口が3分の1)の人口を3倍して、アメリカから切り離して太平洋の端っこに浮かべて、日本のように資源を無くして、英語をしゃべれない人が住んでいて、敗戦国からスタートすると仮定してみましょう。国語が英語でなければ、優秀な人材の流入はかなり少なくなります。産業で繁栄し世界の第4極目を創り出せたら奇跡だと思います。こう考えると日本はうまくやっている方だと思えてきませんか?

楽観論の2つの問題点

日本はうまくやっていると言うことの問題点はおそらく2つあります。一つは悲観論は問題を人々に認識させる効果があるのに対し、楽観論は現状で良いという雰囲気を作るので現状が改善されません。この辺りは、日本人はなぜ悲観論が好きかこのエントリーを含むはてなブックマークで書いてあるのですが、日本人は悲観論によって目標がクリアになって、現状を改善することができると考えているのではないかと思います。

もう一つの問題点は、楽観論を言う人が、ノーテンキで馬鹿に見えるという点です。悲観論は現状を憂うという知的な感じがするのに対し、楽観論はなぜか何も考えてないように聞こえてしまいます。必要以上に悲観論が増える理由にもなります。

日本はうまくやっていると言ってもいい

このエントリで、1.現状を改善する策を何も生まない、2.言う人が馬鹿に見えてしまうという2つの問題を抱える楽観論をあえて書いたのは、理由があります。問題を認識するには悲観的意見も必要ということを踏まえながらも、あまりに行き過ぎた悲観論は有害だと思うからです。例えば、もっとダメな国だと思い危機感を煽りましょうで挙げたエントリの中には、日本がうまくやっていくことを諦めたようなエントリが散見されます。実際はまだ諦めるには早いのに、問題に立ち向かうことを諦めるような悲観的ムードは有害です。それで、たまには楽観的に捉えてもいいかなと思った次第です。おそらく、実際の状況と言うのは、最悲観論と最楽観論の間にあるのでしょう。
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追加:「パスポートの威力」について補足しました
→人は平等であるはずの世界において現実は平等でない

追加2:「いや、でも働きすぎて日本人の幸福度は低い」という反論に対する考えを書いていこうと思います。
→怠け者同盟の社会は人類の未来
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