アメリカの大学院に留学して、乗り越えなければならない障害と対策があらかじめ書かれています。大学の選び方、願書の書き方、授業の乗り切り方、論文の書き方、履歴書の書き方、果ては就職の仕方、大学でのキャリアの作り方まで満載されているガイドでした。一つ一つは小さな指摘なのですが、知らないと結構苦労することも多そうなので、アメリカに留学する人は読んでおいた方がいいと思います。フランスに留学する人も8割以上は役に立つことだと思いました。
僕は留学が失敗する危険が一番大きいと思うのは、自分の能力に悲観的になったり、未来の見通しに絶望的になったりすることだと思います。本書では、間違った認識によって、こういった罠にかからないように、あらかじめ指摘してくれています。最初は、みんな自分の能力に悲観的になったりするんだということを、教えてくれるので、精神衛生によいと思います。
ディスカッションについていけなくて小さくなっていた頃は、話の内容がわからないのは自分が馬鹿でみんなが賢いからだ、と思い込んで、授業のたびに落ち込んでいた。...(略)...、実際はセミナーという独特の状況を構成している要素は、他にもさまざまあるのだ。精神衛生のためにも、それを理解しておくとよい。(P. 72, 73)授業で発言できないプレッシャーや、わからないのは自分だけじゃないのかという疑心暗鬼はよくわかります。でも日本での授業を思い返せば、母国語でもすべて理解できている訳ではないんですよね。余計なプレッシャーは感じる必要がないということは同意です。
また、自分の現状の課題は博士論文なので、以下のように書かれていると、気が休まる気がします。これから、絶望的になったり、悲観的になったりしたときには思い出そうと思います。
目標を高くもつのは大事なことだが、自分に課する基準が高すぎて、自分が今までに読んできたすぐれた論文や研究書と同レベルのもの、自分で「これは完璧」と思えるものが書けるまでコンピューターに向かって格闘していたのでは、博士論文は終えられない。あなたがこれまでに読んできた本や論文というのは、あなたが今しているような勉強を、あなたの何倍のも年数をかけてやってきた第一線の研究者によって書かれたものである。(p. 124)最後に、あとがきに見たことのある名前がありました。
アメリカの大学院生活を送る中で、私が心の支えにした一冊の本がある。水村美苗さんの『私小説 from left to right水村美苗さんって聞いたことあるな、と思ったら、最近たくさんのブログで話題になっていた『日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で』である。陰鬱なニューイングランドの冬や先の見えない大学院生活からくる閉塞感に始まって、日本人としてアメリカで生きることをめぐる孤独、ふるさとである日本に感じる違和感、外国語を使って生活する中で鋭敏になる言葉に対する思い入れなど、私が抱いていた思いをすべて文字にしてくれた、わたしにとってはまさにバイブルのような本である。(p.244)
アメリカの大学院で成功する方法―留学準備から就職まで (中公新書)
吉原 真里 (著)第1章 留学を決めるまでアメリカの大学院に留学を考えている読者に、本書は具体的な情報とアドバイスを提供する。アメリカの大学院はどんなところで、学生には何が期待されている のか。日本の大学院とは異なるアメリカの大学院の仕組みをふまえ、「プロ養成機関」としての大学院を最大限に活用するための手段と心構えを説く。ブラウン 大学に学び、ハワイ大学に職を得た著者による、実践的・現実的な留学成功のためのガイダンス。
第2章 スタートラインに立つまで
第3章 泣いている間もないコース・ワーク
第4章 地獄の試験勉強
第5章 いよいよ研究論文
第6章 まるで本職ティーチング・アシスタント
第7章 「自分の勉強」以外にあなたがするべきこと
第8章 不安がいっぱい就職活動
第9章 アメリカの大学で生き延びるために
日本とフランスの,留学,研究,政治,経済,外交,歴史,文化について考える 


