大丈夫な日本 (文春新書)
この本はおすすめできません。感じ方は読者によって違うので、本ブログの書評は僕には面白くない本も面白かった部分だけ抜き出して記録しているのですが、この本は面白かった部分を抜き出すより、共感できなかったところを抜き出す方がよいです。というのも、この本をそのまま信じるのがかなりまずいからです。

この世界は、石油を燃料にして加速し続け、規模を拡大し続けなければシステムが維持できない資本主義のシステムによって動いています。いつか限界が来ることは誰もが知っています。しかし、社会で働き、生きていくには、この拡大し続ける仕組みに従っていくしかありません。本書では、1〜3章で、この問題に対する解答として、日本の江戸時代を挙げています。妥当な論理もありますが、言うなれば「昔に戻れ」ということです。石油も自動車も無い社会では確かにはるかにエコなシステムを実現できるでしょう。でも、それが出来ないから難問なのです。

「第4章 世界の覇者アメリカが堕ちるとき」では、20世紀のイギリスの没落をもとにアメリカの落日を論じています。歴史上、永久に覇者だった国は無いのですから、大げさに解説しなくとも常識というべきでしょう。

5章の中国関連は予備知識が無く信じてしまうと最も危険です。恥ずかしながら3〜4年前には、僕自身もこういった考え方をしていたと告白します。まず、日本の対中政策への提言です。
対日本で、米中の手を組ませないというのは、日本の地政学的な政策の、基本中の基本なのです。アメリカが今後、戦前にもあった中国への錯覚、「戦略的パー トナー」のような幻想と甘い思い込みに引きずられないように、日本はさまざまに働きかける必要があります。(P. 154)
ようは、米中が仲良しにならぬように常に邪魔をしろということです。言いかえると米中対立は日本の利益になるということです。本当にそうでしょうか?そうではありません。共に覇権を目指すアメリカと中国が激突することこそ、日本を危機に陥れると考えます。核兵器を所有する米中二大大国の覇権争いに、アメリカの前線基地となった日本が、参戦するのが利益でしょうか...。逆に米中の関係が険悪になったら、日本が二国の手を携えるぐらいの度量が必要だと考えます。日本の指導者が上の引用のような稚拙な論理に惑わされることは無いでしょうが...。

次に、中国関連の経済の話。
1992年、鄧小平が広州などをまわった時に発表した南巡談話には、「成長は全てを解決する」という一節がありました。それを実現するために中国がやって来たことは、まず外資を導入し、合弁企業をつくり、そこで徹底的にノウハウを盗む。その後は、そのノウハウを使って別会社をつくり、別会社が順調に動き出すと、元の合弁企業に難癖をつけて潰してしまうか、撤退させてしまう。そういう方法で、あらゆるモノをつくってきました。 (P. 174)
中国はノウハウを盗みながら、成長するらしいです...。まるで昔、ヨーロッパが成長するアメリカへ、欧米が成長する日本へ言っていたような、「コピーしか出来ない人達」というレッテル貼りみたいです。仮に上の断定が経営者に知れ渡っている真実だとすると、世界の企業が中国で作っている合弁企業の経営者は、ノウハウだけ盗まれに、中国に進出しているのでしょうか...。もちろん違います。もっと先の将来を見据えて中国に進出しているのです。これも企業を引っ張る経営者達が上の引用のような断言に惑わされることも無いでしょうが...。

また、中国は、「まともに考えれば、無事に発展を続けられるような要素はほとんどないのです。(P.184)」と断定しているのですが、理由として環境破壊/資源不足など日本の時も欧米から散々に言われた表現を言い回しています。日本に出来たことを、中国に出来ないと断定することがどれほど不可能であるかということに気づきましょう(当然、出来るとも言えませんが)。

全体を読んでみて、もしかしたら著者は冗談を集めて書いているのではないかと疑いました。僕の考え過ぎでしょうか、膨大な断定の数々から著者のこらえ笑いが漏れ聞こえるような気もします。もしかして著者は全力でボケていて、本書はツッコミ待ちだったのかも知れません。もしそうだとしたら、無粋なツッコミ失礼しました。本書を読む時は丸呑みしないように気をつけてください。
大丈夫な日本 (文春新書)
福田 和也 (著)

第1章 さらば右肩上がりの時代
第2章 群雄割拠が磨いた国家経営のノウハウ
第3章 江戸システムの先進性
第4章 世界の覇者アメリカが堕ちるとき
第5章 中国との距離感を歴史に学ぶ
第6章 わが国の針路

人口減少、財政赤字、中国台頭、階層化-。どれも、怖るるに足りず。日本という国家が再建し発展していくためのグランドデザインを、教育、経済、外交、エネルギー、倫理などの面から語り尽くす。これで日本の未来も安心だ!
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大丈夫な日本 (文春新書)
この本はおすすめできません。感じ方は読者によって違うので、本ブログの書評は僕には面白くない本も面白かった部分だけ抜き出して記録しているのですが、この本は面白かった部分を抜き出すより、共感できなかったところを抜き出す方がよいです。というのも、この本をそのまま信じるのがかなりまずいからです。

この世界は、石油を燃料にして加速し続け、規模を拡大し続けなければシステムが維持できない資本主義のシステムによって動いています。いつか限界が来ることは誰もが知っています。しかし、社会で働き、生きていくには、この拡大し続ける仕組みに従っていくしかありません。本書では、1〜3章で、この問題に対する解答として、日本の江戸時代を挙げています。妥当な論理もありますが、言うなれば「昔に戻れ」ということです。石油も自動車も無い社会では確かにはるかにエコなシステムを実現できるでしょう。でも、それが出来ないから難問なのです。

「第4章 世界の覇者アメリカが堕ちるとき」では、20世紀のイギリスの没落をもとにアメリカの落日を論じています。歴史上、永久に覇者だった国は無いのですから、大げさに解説しなくとも常識というべきでしょう。

5章の中国関連は予備知識が無く信じてしまうと最も危険です。恥ずかしながら3〜4年前には、僕自身もこういった考え方をしていたと告白します。まず、日本の対中政策への提言です。
対日本で、米中の手を組ませないというのは、日本の地政学的な政策の、基本中の基本なのです。アメリカが今後、戦前にもあった中国への錯覚、「戦略的パー トナー」のような幻想と甘い思い込みに引きずられないように、日本はさまざまに働きかける必要があります。(P. 154)
ようは、米中が仲良しにならぬように常に邪魔をしろということです。言いかえると米中対立は日本の利益になるということです。本当にそうでしょうか?そうではありません。共に覇権を目指すアメリカと中国が激突することこそ、日本を危機に陥れると考えます。核兵器を所有する米中二大大国の覇権争いに、アメリカの前線基地となった日本が、参戦するのが利益でしょうか...。逆に米中の関係が険悪になったら、日本が二国の手を携えるぐらいの度量が必要だと考えます。日本の指導者が上の引用のような稚拙な論理に惑わされることは無いでしょうが...。

次に、中国関連の経済の話。
1992年、鄧小平が広州などをまわった時に発表した南巡談話には、「成長は全てを解決する」という一節がありました。それを実現するために中国がやって来たことは、まず外資を導入し、合弁企業をつくり、そこで徹底的にノウハウを盗む。その後は、そのノウハウを使って別会社をつくり、別会社が順調に動き出すと、元の合弁企業に難癖をつけて潰してしまうか、撤退させてしまう。そういう方法で、あらゆるモノをつくってきました。 (P. 174)
中国はノウハウを盗みながら、成長するらしいです...。まるで昔、ヨーロッパが成長するアメリカへ、欧米が成長する日本へ言っていたような、「コピーしか出来ない人達」というレッテル貼りみたいです。仮に上の断定が経営者に知れ渡っている真実だとすると、世界の企業が中国で作っている合弁企業の経営者は、ノウハウだけ盗まれに、中国に進出しているのでしょうか...。もちろん違います。もっと先の将来を見据えて中国に進出しているのです。これも企業を引っ張る経営者達が上の引用のような断言に惑わされることも無いでしょうが...。

また、中国は、「まともに考えれば、無事に発展を続けられるような要素はほとんどないのです。(P.184)」と断定しているのですが、理由として環境破壊/資源不足など日本の時も欧米から散々に言われた表現を言い回しています。日本に出来たことを、中国に出来ないと断定することがどれほど不可能であるかということに気づきましょう(当然、出来るとも言えませんが)。

全体を読んでみて、もしかしたら著者は冗談を集めて書いているのではないかと疑いました。僕の考え過ぎでしょうか、膨大な断定の数々から著者のこらえ笑いが漏れ聞こえるような気もします。もしかして著者は全力でボケていて、本書はツッコミ待ちだったのかも知れません。もしそうだとしたら、無粋なツッコミ失礼しました。本書を読む時は丸呑みしないように気をつけてください。
大丈夫な日本 (文春新書)
福田 和也 (著)

第1章 さらば右肩上がりの時代
第2章 群雄割拠が磨いた国家経営のノウハウ
第3章 江戸システムの先進性
第4章 世界の覇者アメリカが堕ちるとき
第5章 中国との距離感を歴史に学ぶ
第6章 わが国の針路

人口減少、財政赤字、中国台頭、階層化-。どれも、怖るるに足りず。日本という国家が再建し発展していくためのグランドデザインを、教育、経済、外交、エネルギー、倫理などの面から語り尽くす。これで日本の未来も安心だ!
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「エコノミック・アニマル」は褒め言葉だった―誤解と誤訳の近現代史 (新潮新書)
外国語を自国の言葉に翻訳する時にニュアンスが変わってしまうことがよくあります。この本は、歴史上有名な言葉で、翻訳の時にニュアンスが変わってしまった言葉を取り上げています。マッカーサーの「日本人は十二歳の少年」という発言や、「エコノミック・アニマル」「ウサギ小屋」というよく使われる言葉もそれに当たるそうで、興味深いです。

日米開戦前夜に事前に漏れていた解読された暗号の誤訳などは、米国指導者の決定にも影響を与えた可能性があるなど、重要な局面にも誤訳が存在します。むしろ、母国語以外の環境に身を置くと誤訳や勘違い、ニュアンスの不理解などが日常的におこっていると考えられます。

日本の貧弱な住居を表す「ウサギ小屋」はフランス語→英語→日本語と訳されて意味が変化してしまった例でした。まあ、どちらにしろ褒め言葉ではないのですが、フランス語のニュアンスはパリにもたくさんあるような集合住宅のことみたいです。
cage à lapins ・・・画一的な狭いアパルトマンの多くからなる建物
「ウサギ小屋」は何も日本人のために作った言葉ではなかったのである。(P. 58)
もう一つもフランス語関連を取り上げます。本ブログでも何度か取り上げた「古いヨーロッパ」発言に関するものです(→正論を主張する国「イラク戦争に反対したフランス」国連安全保障理事会:ヴィルパン外相の演説)。vieilleは古くさいを意味して、ancienは古く格式があるを意味します。
つまりフランス人にとって米国人にvieille Europeと呼ばれることは「古くさいヨーロッパ」と言われているようで怒りを感ずるが、ancienne Europeと呼ばれるのは「古くて格式のあるヨーロッパ」と言われているように捉えられ、うれしく感じるということらしい。(P. 164)
著者自身の留学体験や、夏目漱石の悲劇的な留学体験、魯迅の素晴らしかった留学体験などを比較し、留学したその国を好きになるか否かはどうやって決まるかということについて、最後の結論はこう結ばれていました。
経済面で困窮していないこと、住む家が悪くないこと、その国の人間、しかも知的な階層の人々との交流が少しでも行われること、少しで良いからその国の人間から親切にされたことがあること(そもそも知的階層の人々は心に余裕があり、ユーモアにあふれ、外国人にも親切であるというのが私の印象である)、その国の言葉を使って当初よりある程度の意思疎通が出来ること、と思われる。そんな瑣末なことの集積で、実はその人の相手の国に対する見方は確実に決まってくると思うのである。(P.124)
同意します。これから留学する方は心に留めておくと良いです。
「エコノミック・アニマル」は褒め言葉だった―誤解と誤訳の近現代史 (新潮新書)
多賀 敏行 (著)
  • 第1章 「日本人は十二歳」の真意—この一言で、マッカーサー元帥は日本人に嫌われてしまったのだが…。
  • 第2章 「エコノミック・アニマル」「ウサギ小屋」は悪口か—二つの言葉には、日本への意外な高評価が隠されていた。
  • 第3章 アーネスト・サトウと山下将軍の無念—外交の場では小さな勘違いが致命傷になる。そこに悪意はなくても…。
  • 第4章 暗号電報誤読の悲劇 日米開戦前夜—悪意に溢れた米国側の「誤訳」が、日米開戦のきっかけだった!
  • 第5章 漱石の鬱屈、魯迅の感動—イギリスで屈辱を味わった文豪と日本の人情に触れた文豪。
  • 第6章 ダイアナ妃とブッシュ・シニアの文法—世界を揺るがせたプリンセスの三人称。大統領が見せた言語学の知識。
  • 第7章 存在しない「グローバル・スタンダード」という言葉—政財界がお題目にした「基準」は、日本でしか通用しない言葉だった!
  • 第8章 ブッシュ・ジュニアの国連演説—単数か複数か、それが大問題だった。イラク戦争を巡る駆け引き。
  • 第9章 騒動の中心はたったひとつの言葉—「うすのろ」「強情者」呼ばわりで大統領も首相も激怒。
マッカーサーの「日本人は十二歳の少年」という発言や、「エコノミック・アニマル」「ウサギ小屋」といった言葉は、日本人をネガティブに評する際に使われ る決まり文句である。しかし、実はこれらの言葉に批判的な意味はなかった。日米開戦のきっかけになった誤訳、ダイアナ妃の招いた誤解、世界には通じない 「グローバル・スタンダード」の意味等、近現代史のさまざまな場面での誤解、誤訳を紹介する。
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「エコノミック・アニマル」は褒め言葉だった―誤解と誤訳の近現代史 (新潮新書)
外国語を自国の言葉に翻訳する時にニュアンスが変わってしまうことがよくあります。この本は、歴史上有名な言葉で、翻訳の時にニュアンスが変わってしまった言葉を取り上げています。マッカーサーの「日本人は十二歳の少年」という発言や、「エコノミック・アニマル」「ウサギ小屋」というよく使われる言葉もそれに当たるそうで、興味深いです。

日米開戦前夜に事前に漏れていた解読された暗号の誤訳などは、米国指導者の決定にも影響を与えた可能性があるなど、重要な局面にも誤訳が存在します。むしろ、母国語以外の環境に身を置くと誤訳や勘違い、ニュアンスの不理解などが日常的におこっていると考えられます。

日本の貧弱な住居を表す「ウサギ小屋」はフランス語→英語→日本語と訳されて意味が変化してしまった例でした。まあ、どちらにしろ褒め言葉ではないのですが、フランス語のニュアンスはパリにもたくさんあるような集合住宅のことみたいです。
cage à lapins ・・・画一的な狭いアパルトマンの多くからなる建物
「ウサギ小屋」は何も日本人のために作った言葉ではなかったのである。(P. 58)
もう一つもフランス語関連を取り上げます。本ブログでも何度か取り上げた「古いヨーロッパ」発言に関するものです(→正論を主張する国「イラク戦争に反対したフランス」国連安全保障理事会:ヴィルパン外相の演説)。vieilleは古くさいを意味して、ancienは古く格式があるを意味します。
つまりフランス人にとって米国人にvieille Europeと呼ばれることは「古くさいヨーロッパ」と言われているようで怒りを感ずるが、ancienne Europeと呼ばれるのは「古くて格式のあるヨーロッパ」と言われているように捉えられ、うれしく感じるということらしい。(P. 164)
著者自身の留学体験や、夏目漱石の悲劇的な留学体験、魯迅の素晴らしかった留学体験などを比較し、留学したその国を好きになるか否かはどうやって決まるかということについて、最後の結論はこう結ばれていました。
経済面で困窮していないこと、住む家が悪くないこと、その国の人間、しかも知的な階層の人々との交流が少しでも行われること、少しで良いからその国の人間から親切にされたことがあること(そもそも知的階層の人々は心に余裕があり、ユーモアにあふれ、外国人にも親切であるというのが私の印象である)、その国の言葉を使って当初よりある程度の意思疎通が出来ること、と思われる。そんな瑣末なことの集積で、実はその人の相手の国に対する見方は確実に決まってくると思うのである。(P.124)
同意します。これから留学する方は心に留めておくと良いです。
「エコノミック・アニマル」は褒め言葉だった―誤解と誤訳の近現代史 (新潮新書)
多賀 敏行 (著)
  • 第1章 「日本人は十二歳」の真意—この一言で、マッカーサー元帥は日本人に嫌われてしまったのだが…。
  • 第2章 「エコノミック・アニマル」「ウサギ小屋」は悪口か—二つの言葉には、日本への意外な高評価が隠されていた。
  • 第3章 アーネスト・サトウと山下将軍の無念—外交の場では小さな勘違いが致命傷になる。そこに悪意はなくても…。
  • 第4章 暗号電報誤読の悲劇 日米開戦前夜—悪意に溢れた米国側の「誤訳」が、日米開戦のきっかけだった!
  • 第5章 漱石の鬱屈、魯迅の感動—イギリスで屈辱を味わった文豪と日本の人情に触れた文豪。
  • 第6章 ダイアナ妃とブッシュ・シニアの文法—世界を揺るがせたプリンセスの三人称。大統領が見せた言語学の知識。
  • 第7章 存在しない「グローバル・スタンダード」という言葉—政財界がお題目にした「基準」は、日本でしか通用しない言葉だった!
  • 第8章 ブッシュ・ジュニアの国連演説—単数か複数か、それが大問題だった。イラク戦争を巡る駆け引き。
  • 第9章 騒動の中心はたったひとつの言葉—「うすのろ」「強情者」呼ばわりで大統領も首相も激怒。
マッカーサーの「日本人は十二歳の少年」という発言や、「エコノミック・アニマル」「ウサギ小屋」といった言葉は、日本人をネガティブに評する際に使われ る決まり文句である。しかし、実はこれらの言葉に批判的な意味はなかった。日米開戦のきっかけになった誤訳、ダイアナ妃の招いた誤解、世界には通じない 「グローバル・スタンダード」の意味等、近現代史のさまざまな場面での誤解、誤訳を紹介する。
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Versailles, France
本ブログの「なぜフランスに留学するのか:フランスの教育」では、「フランスの学校はほとんどが公立学校で、学費が無料です。」と書いていたのですが、本ブログの「グランゼコールの組織形態と学費」において商業系(MBA)のグランゼコールでは、私立の割合も半分ぐらいあり、学費も7000〜8500ユーロほどかかることが分かりました。

しかし、フランスの教育における学費負担は無料が基本です。この辺の事情については、「[書評] 日本とフランス 二つの民主主義」に詳しいです。少し抜き出します。
フランスの教育は、幼稚園から大学に至るまで、通常の教育機関は無償あるいは超低学費が大前提である。(P236、『私学でも学費はダダがフランス的常識』)
国立大学の学費が1990年から2005年にかけて、なんと2倍近くに跳ね上がったのだ。それでも、2005年度の年学費は、学部課程の場合、登録税 156ユーロと予防保険費4.57ユーロで総計160.57ユーロ(約2万3350円)に過ぎない(P.238、『フランスの学費急騰問題』)
日本の場合、ヨーロッパ諸国に比べて、養育費に対する私費負担の割合が非常に高い。(P.239、『日本の教育費』)
フランスの教育にかかる私費負担は、日本よりだいぶ安価であることが分かります。実際、僕が通っているフランスの博士課程も日本における博士課程の学費の20分の1程度です。以上が僕の知っているフランスの学費の情報だったので、「報道されないフランスの真実(2)」において、商業系のグランゼコールの学費が高額であることを示した後、以下のように書かれていたのには驚きました。
フランス人の中にも「アメリカや日本の大学は学費が高い」と言う人がいるが、自分の庭をあまり見ていないようだ。ここで、読者の皆さんに問いたい。「フランスの教育は安いぞ!」と報道する日本メディアは、こうした実情を知っているであろうに、そのようなことを言って良いのか。...(略)...また「フランスの高等教育は安いぞ!」と触れ回っている日本の知識人やメディアには「日本人よ、日本の教育を恨め」という本音があるように感じる。
グランゼコールは一般的な教育と比べると特殊で、経営学修士(MBA)はその中でさらに特殊なところです。そこの学費が高額なことを理由に上のように、フランスの高等教育と一般化して述べてしまうと、フランスの一般の大学や、理系のグランゼコールまで高額な授業料を要求しているのかと誤解してしまいます。

日仏における教育おける私費負担はOECDのEducation at a Glanceに統計資料があります。在学者一人当たり教育支出(エクセルデータ)を画像として保存したものを転載しておきます。日本の教育における私費負担は60%近く、フランスは15%近くということが分かります。

また、日本の教育を改善したいと願う者が日本の教育の短所を指摘し、外国の教育の長所を探してくるのは建設的な議論です。日本の長所を誇り、外国の短所をあげつらっても、日本の問題は見えなくなるだけで解決されることはありません。

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Versailles, France
本ブログの「なぜフランスに留学するのか:フランスの教育」では、「フランスの学校はほとんどが公立学校で、学費が無料です。」と書いていたのですが、本ブログの「グランゼコールの組織形態と学費」において商業系(MBA)のグランゼコールでは、私立の割合も半分ぐらいあり、学費も7000〜8500ユーロほどかかることが分かりました。

しかし、フランスの教育における学費負担は無料が基本です。この辺の事情については、「[書評] 日本とフランス 二つの民主主義」に詳しいです。少し抜き出します。
フランスの教育は、幼稚園から大学に至るまで、通常の教育機関は無償あるいは超低学費が大前提である。(P236、『私学でも学費はダダがフランス的常識』)
国立大学の学費が1990年から2005年にかけて、なんと2倍近くに跳ね上がったのだ。それでも、2005年度の年学費は、学部課程の場合、登録税 156ユーロと予防保険費4.57ユーロで総計160.57ユーロ(約2万3350円)に過ぎない(P.238、『フランスの学費急騰問題』)
日本の場合、ヨーロッパ諸国に比べて、養育費に対する私費負担の割合が非常に高い。(P.239、『日本の教育費』)
フランスの教育にかかる私費負担は、日本よりだいぶ安価であることが分かります。実際、僕が通っているフランスの博士課程も日本における博士課程の学費の20分の1程度です。以上が僕の知っているフランスの学費の情報だったので、「報道されないフランスの真実(2)」において、商業系のグランゼコールの学費が高額であることを示した後、以下のように書かれていたのには驚きました。
フランス人の中にも「アメリカや日本の大学は学費が高い」と言う人がいるが、自分の庭をあまり見ていないようだ。ここで、読者の皆さんに問いたい。「フランスの教育は安いぞ!」と報道する日本メディアは、こうした実情を知っているであろうに、そのようなことを言って良いのか。...(略)...また「フランスの高等教育は安いぞ!」と触れ回っている日本の知識人やメディアには「日本人よ、日本の教育を恨め」という本音があるように感じる。
グランゼコールは一般的な教育と比べると特殊で、経営学修士(MBA)はその中でさらに特殊なところです。そこの学費が高額なことを理由に上のように、フランスの高等教育と一般化して述べてしまうと、フランスの一般の大学や、理系のグランゼコールまで高額な授業料を要求しているのかと誤解してしまいます。

日仏における教育おける私費負担はOECDのEducation at a Glanceに統計資料があります。在学者一人当たり教育支出(エクセルデータ)を画像として保存したものを転載しておきます。日本の教育における私費負担は60%近く、フランスは15%近くということが分かります。

また、日本の教育を改善したいと願う者が日本の教育の短所を指摘し、外国の教育の長所を探してくるのは建設的な議論です。日本の長所を誇り、外国の短所をあげつらっても、日本の問題は見えなくなるだけで解決されることはありません。

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Paris, France
本ブログの「なぜフランスに留学するのか:フランスの教育」では、「フランスの学校はほとんどが公立学校で、学費が無料です。」と書いたのですが、それと対立する記述を見つけたので、その原因について言及したいと思います。

まず、対立する記述は下のグランゼコールに対する解説記事に見られました。
その1つの理由としては、グランゼコールの過半数は私立なので、学費が高いということが挙げられるだろう。(2)
僕の持っていた知識とは正反対の記述に驚きました。さらに、以下のように続きます。
学費についてだが、フランス教育省は、グランゼコールの年間学費は4,500〜7,000ユーロがかかるとホームページで発表している。(2)
以下のシリーズはグランゼコールを批判的にとらえた興味深い指摘が並んでいます。(ただし、誤解を招きそうな表現がありますので、別エントリで指摘します。)
グランゼコールは公立なのか私立なのか、学費は(ほぼ)無料なのかという点について、食い違っている原因は二つのサイトが扱っているグランゼコールの種類によるものでした。本ブログは筆者の分野である「技術系のグランゼコール」を扱い、上のサイトでは「商業系(MBA)のグランゼコール」を扱っていたのでした。下に技術系/商業系のグランゼコールの組織形態と学費を示したものを作りました。資料はLe Point誌(技術学校商業学校)を参照し、数字の単位はユーロです。

技術系のグランゼコールは公立が多く、年間の学費も0〜1000ユーロ(0〜16万円)ほどです。それに対し、商業系のグランゼコールは公立/私立が半分ずつぐらいで、学費も7000〜8500ユーロ(110万〜140万円)と高額でした。僕自身は商業系のグランゼコールが高額な授業料を要求していることを知らなかったので、訂正したいと思います。商業系のグランゼコールはかなり特殊で、一般の大学や技術系のグランゼコールと違い私立の率も高く、学費も日本のものと同額ぐらい払う必要があるようです。

技術系のグランゼコール学費(年間)
組織
Ecole des Mines de Paris 700公立
EP - Ecole Polytechnique - Palaiseau0公立
Télécom Paris1020
公立
ENPC - Ecole des Ponts - Marne-la-Vallée1030
公立
SUPAERO Toulouse500
公立
ENST Bretagne - Brest1020
公立
ESPCI - Paris0
公立
Ecole Centrale de Lyon500
公立
Ecole Centrale de Paris845
公立
Ecole des Mines de Saint-Etienne 450
公立
Ecole des Mines de Nancy 542
公立
SUPELEC
750
私立
ENSAM - Paris689
公立
ENSIC - Nancy700
公立
ENSTA - Paris500
公立


商業系(MBA)のグランゼコール学費(年間)
組織
HEC7750公立
ESSEC8633私立
ESCP-EAP7700公立
Edhec8250私立
EM Lyon7625私立
Grenoble Ecole de Management7210公立
Audencia-Nantes6800私立
ESC Rouen7400公立
Euromed7050公立
Bordeaux Ecole de Management7203公立
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