「怠け者同盟の社会は人類の未来」で述べた怠け者同盟の社会の持つ一番の問題点として、働き者の社会との競争に容易に敗北するということが挙げられます。怠け者同盟の社会では、週35時間しか働いていなくて、日曜日は店を開けることが禁止されています。一方、働き者の社会では24時間オープンのコンビニが氾濫し、人々は家族団らんの時間や読書・音楽といった文化的な生活を送る時間を削りながらも働いているので当然です。
働き者の社会は、熾烈な競争を通じて全体のパイを広げるアングロサクソン(米英)モデルとも言え、日本の社会も採用しているモデルです。当然、怠け者同盟の社会と働き者の社会の間の競争は、働き者の社会の完勝と言えます。普通に競争すると怠け者同盟の社会が競争に勝利することはありえません。
さらに、フランスでは35時間労働制や日曜日労働禁止など、競争をエスカレートさせないルールが設定されていて商売がしにくいため、工場が隣国に逃げていきます。なぜなら、外国企業が、工場を作ってフランス人を雇うにしても、怠け者ルールを適応されてしまいます。フランスで利益を上げようとするなら、隣国で製品を作ってフランス市場で売る方が利益が出ます。
当然フランスも、1.フランスの品質の低下によりグローバル市場でのシェアが低下する問題、2.産業が隣国に逃げ出していく問題に気づいています。
まず、この市場で競争がエスカレートしないようなルールを設定します。労働者が35時間以上働いた企業や、日曜日に開店した店舗を抜け駆けとして市場から排除します。現状だと、過労死が発生した企業や、サービス残業が横行している企業は格好のターゲットになるでしょう。こうして、拡大した同盟の市場から働き者を排除していきます。怠け者同盟の社会がフランス一国だったら、グローバル企業は、商売が難しいフランス市場を見捨てたかも知れません。それがEU27カ国となると話は違ってきます。ユーロ経済圏のGDPはアメリカのGDPを凌駕しています。簡単に諦められる市場規模ではありません。EUで商売をする企業はEUで通用するルールに則って商売するしかありません。
1789年、フランス人権宣言とも呼ばれる人間と市民の権利の宣言(Déclaration des Droits de l'Homme et du Citoyen)を高らかに宣言したフランスは、人権の母国としてのプライドを持っています。人がより良く存在できるための理念を率先して作るのは自分達だと思っています。発展途上国の悲惨な未成年の不当労働を持ち出して世論を動かし、反論することも困難なほどの論理をもって人権の範囲を拡大してくるでしょう。つまり労働の制限が人権に加えられようとしています。英語でもフランス語でもKarōshi(過労死)という単語が使われます。これは、日本に興味があるわけではなく(少しはあるかもしれませんが)、同盟の論理を強化する理由に使える可能性があると思って興味を持っていると思われます。
さらに、「競争の抑制によるソシアリスムの実現」にも書きましたが、昨今ヨーロッパで流行っている近い活動にフェアトレードの 考え方があります。これは途上国の製品を不当に買い叩かないという慈善的な意味合いを持つ活動ですが、労働に対して正当な値段を付けるというフェアトレードの考え方は、不当な労働に対しては許容しないという考え方に移行するかもしれません。未成年の過剰労働などを通じて不当な搾取によって作られた製品をEU27カ国の市場から閉め出したりすることが、将来可能になるかもしれません。世界の風潮と、怠け者同盟の取りうる戦略を考察するとそういった結論にたどり着きます。過激な競争によって製品の品質を向上させる日本企業は怠け者同盟の社会の動きに注目です。
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1.仲間を募って同盟を拡大し、2.世界を説得する論理を創り出すと言うのは、今の日本の苦手とするところです。今後は、この同盟のイニシアチブを握るフランスの状況を分析した後、日本の取りうる戦略について考察しようと思います。このブログでは、以下のエントリを予定しています。
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働き者の社会は、熾烈な競争を通じて全体のパイを広げるアングロサクソン(米英)モデルとも言え、日本の社会も採用しているモデルです。当然、怠け者同盟の社会と働き者の社会の間の競争は、働き者の社会の完勝と言えます。普通に競争すると怠け者同盟の社会が競争に勝利することはありえません。
怠け者同盟の社会の弱点
怠け者同盟の社会の弱点は、国内市場で競争を抑制できても、グローバル市場では競争を排除できない点です。怠け者ルールを国内で徹底していても、怠け者同盟の社会がフランス一国であれば、フランスの産業だけの国際競争力が低下して、フランスだけが貧しくなります。フランスの製品の品質が低下するから、外国では売れません。さらに、フランスでは35時間労働制や日曜日労働禁止など、競争をエスカレートさせないルールが設定されていて商売がしにくいため、工場が隣国に逃げていきます。なぜなら、外国企業が、工場を作ってフランス人を雇うにしても、怠け者ルールを適応されてしまいます。フランスで利益を上げようとするなら、隣国で製品を作ってフランス市場で売る方が利益が出ます。
当然フランスも、1.フランスの品質の低下によりグローバル市場でのシェアが低下する問題、2.産業が隣国に逃げ出していく問題に気づいています。
同盟の拡大を目指す怠け者同盟
そこで、怠け者の同盟を大きくして、怠け者ルールを適応できる範囲を拡大するアプローチが取られます。これが、このブログで怠け者同盟と「同盟」の二文字を加えた理由です。手始めはヨーロッパ27カ国からなるEUでしょう。フランスが一貫してEU議会のイニシアチブを狙っていく理由の一端です。まず、この市場で競争がエスカレートしないようなルールを設定します。労働者が35時間以上働いた企業や、日曜日に開店した店舗を抜け駆けとして市場から排除します。現状だと、過労死が発生した企業や、サービス残業が横行している企業は格好のターゲットになるでしょう。こうして、拡大した同盟の市場から働き者を排除していきます。怠け者同盟の社会がフランス一国だったら、グローバル企業は、商売が難しいフランス市場を見捨てたかも知れません。それがEU27カ国となると話は違ってきます。ユーロ経済圏のGDPはアメリカのGDPを凌駕しています。簡単に諦められる市場規模ではありません。EUで商売をする企業はEUで通用するルールに則って商売するしかありません。
論理によって維持される怠け者同盟
同盟が分裂しないように維持し、強制力をもって働き者を排除する正当性は論理によってなされます。”エスカレートした競争がいかに人を幸せにしないか”、”競争を抑制した社会が人類の未来のあるべき姿”か、主張します。槍玉に挙げられるのは発展途上国の未成年の不当労働、過労死や過剰労働による鬱などです。これらが人間の基本的人権を踏みにじっていると主張します。1789年、フランス人権宣言とも呼ばれる人間と市民の権利の宣言(Déclaration des Droits de l'Homme et du Citoyen)を高らかに宣言したフランスは、人権の母国としてのプライドを持っています。人がより良く存在できるための理念を率先して作るのは自分達だと思っています。発展途上国の悲惨な未成年の不当労働を持ち出して世論を動かし、反論することも困難なほどの論理をもって人権の範囲を拡大してくるでしょう。つまり労働の制限が人権に加えられようとしています。英語でもフランス語でもKarōshi(過労死)という単語が使われます。これは、日本に興味があるわけではなく(少しはあるかもしれませんが)、同盟の論理を強化する理由に使える可能性があると思って興味を持っていると思われます。
怠け者同盟の拡大と同盟の論理の今後の展開
現状では、過労死が発生した企業やサービス残業が発生している企業の製品であってもEU市場から排除する強制力はありません。このエントリでは怠け者同盟の社会が将来取りそうな方策をデフォルメして書いてみました。しかし、フランス社会党の元党首のセゴレーヌ・ロワイヤル氏が2007年の大統領選挙で訴えた、「国際的に人権を保護するフレームワークを各国協調で作り上げる」という構想は、拡大すれば以上に述べてきたような市場に競争を排除するフレームワークともなり得えます。さらに、「競争の抑制によるソシアリスムの実現」にも書きましたが、昨今ヨーロッパで流行っている近い活動にフェアトレードの 考え方があります。これは途上国の製品を不当に買い叩かないという慈善的な意味合いを持つ活動ですが、労働に対して正当な値段を付けるというフェアトレードの考え方は、不当な労働に対しては許容しないという考え方に移行するかもしれません。未成年の過剰労働などを通じて不当な搾取によって作られた製品をEU27カ国の市場から閉め出したりすることが、将来可能になるかもしれません。世界の風潮と、怠け者同盟の取りうる戦略を考察するとそういった結論にたどり着きます。過激な競争によって製品の品質を向上させる日本企業は怠け者同盟の社会の動きに注目です。
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1.仲間を募って同盟を拡大し、2.世界を説得する論理を創り出すと言うのは、今の日本の苦手とするところです。今後は、この同盟のイニシアチブを握るフランスの状況を分析した後、日本の取りうる戦略について考察しようと思います。このブログでは、以下のエントリを予定しています。