ビジネスマンが泣いた「唐詩」一〇〇選サラリーマン人生、人生の哀歌、飲食、青春、友情、旅情、望郷、戦乱などの漢詩を100個紹介した本です。翻訳文と書き下し文の他に、著者による「超訳」が付けられています。この本を手に取ったのは著者が高校のときの漢文の先生だったからです。プロフィールには「大学院修了後、慶応義塾高校で教職につき、国語・漢文・中国語などを教える。同校生徒のアンケートで最も人気のある授業をする先生として親しまれてきた。」とあります。僕自身はアンケートをした覚えはありませんが、先生が一位になることには驚きません。同級生で集まると、いつも先生の話が出るぐらいに面白い授業でした。

著者が提案する超訳は例えば以下のようなものがあります。
六 客中行(かくちゆうこう) 李白
蘭陵(らんりよう)の美酒鬱金香(こんこう)
玉椀(ぎょくわん)盛り来(きた)る琥珀の光
但(た)だ主人をして
能(よ)く客を酔わしめば
何(いず)れの処か是れ他郷

なみなみ酌がれた高級地酒 口からお出迎え うまい酒とウマの合う話し相手がいる所が 俺の故郷さ (p.84)
書き下し文では意味を汲み取るのが難しいですが、超訳ではすごく平易に書かれています。昔の人が詩を作る研ぎ澄まされた技術を用いながら伝えたいことは、現在から考えても理解し会えるような意見なのが新鮮でした。

高校の授業でもそうだったのですが、著者の特性として漢文以外のコラムが面白いと感じました(僕自身、漢文にあまり興味がないので)。昔の中国では美しい詩を作ることができる人物が情緒に秀でたよい統治者であるということが前提となっていたそうです。
近大詩は①字数②平仄(ひょうそく)③押印の他に起承転結や対句などの制約があり、規則どおりの詩が作れるというだけで、中国ではインテリの証明でもあった。その上に読者を感動させる詩を作れるとなれば、人情に精通した一級の人物とみなされ、そうした人物を求めるために官吏登用試験である科挙に詩が課せられるようになったのだ。(p.42)
そのため、一つ一つの詩には、人の人生をかけるほどの現在からは考えられないほどの情熱が傾けられています。詩がどれほどの推敲と努力の上に成り立っているかを知れば、読者がその詩から得られるモノへの期待が高まります。
詩人として名を成せば、科挙に合格して進士になれなくても皇帝の側近くに仕えることも役人として遇されることも可能だった。現に、李白や杜甫は一時期そうした厚遇に与っている。そのためもあって詩人たちの詩に対する思いは妄執と呼べるほど凄まじいものだった。(p.130)
先生に高校で漢文を習っていたときには、漢文が好きなちょっと変わった先生というのと、なんかすごい人だと漠然と思うぐらいでしたが、この本を読むと深い知識とそれに裏打ちされた考察がすごいと見直しました。高校での授業の他は何をしているんだろうなと不思議でしたが、しっかりと研究をされていたのだと思いました。また、先生の祖父も知名度のある漢学者だということもこの本ではじめて知りました。
幸い祖父の佐久節は学識も知名度も共に備えた漢学者であり、漢詩の訳者でもあった。(p.4)
またあとがきを読み、最後の漢文の授業で、定年後に漢詩を作ることを勧めていたのを思い出しました。
というわけで、定年を迎えて時間的な余裕をできた読者には、ぜひとも漢詩を作ることをお勧めしたい。若い読者には、その時のための準備を始めていただきたい。(p.225)
ビジネスマンが泣いた「唐詩」一〇〇選
佐久 協 (著)
1 サラリーマン人生
2 人生の哀歓
3 飲食
4 青春
5 友情
6 旅情
7 望郷
8 戦乱

「国破れて山河在り」「昔聞く洞庭の水」「白髪三千丈」…。古来、誰もが暗誦した唐代の名詩。その作者たちは、多くが科挙の合格者であり、青春の輝きを謳歌した。しかしまもなく世知辛い現実に直面して、エリートだった自分もまた敗者であるということを知った。酒食に憂さを晴らし、友と別れ、旅情に涙し、望郷の念に胸を焦がしながら、詩作にわが身の哀歓をぶつけたのだ。当時の詩人たちの心情が、現代日本人のそれと何ら変わらないのに驚かされるだろう。本書では、字句や文法の吟味は横において、詩本来の内容やリズムを肌で感じられるような訳を試みた。
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ビジネスマンが泣いた「唐詩」一〇〇選サラリーマン人生、人生の哀歌、飲食、青春、友情、旅情、望郷、戦乱などの漢詩を100個紹介した本です。翻訳文と書き下し文の他に、著者による「超訳」が付けられています。この本を手に取ったのは著者が高校のときの漢文の先生だったからです。プロフィールには「大学院修了後、慶応義塾高校で教職につき、国語・漢文・中国語などを教える。同校生徒のアンケートで最も人気のある授業をする先生として親しまれてきた。」とあります。僕自身はアンケートをした覚えはありませんが、先生が一位になることには驚きません。同級生で集まると、いつも先生の話が出るぐらいに面白い授業でした。

著者が提案する超訳は例えば以下のようなものがあります。
六 客中行(かくちゆうこう) 李白
蘭陵(らんりよう)の美酒鬱金香(こんこう)
玉椀(ぎょくわん)盛り来(きた)る琥珀の光
但(た)だ主人をして
能(よ)く客を酔わしめば
何(いず)れの処か是れ他郷

なみなみ酌がれた高級地酒 口からお出迎え うまい酒とウマの合う話し相手がいる所が 俺の故郷さ (p.84)
書き下し文では意味を汲み取るのが難しいですが、超訳ではすごく平易に書かれています。昔の人が詩を作る研ぎ澄まされた技術を用いながら伝えたいことは、現在から考えても理解し会えるような意見なのが新鮮でした。

高校の授業でもそうだったのですが、著者の特性として漢文以外のコラムが面白いと感じました(僕自身、漢文にあまり興味がないので)。昔の中国では美しい詩を作ることができる人物が情緒に秀でたよい統治者であるということが前提となっていたそうです。
近大詩は①字数②平仄(ひょうそく)③押印の他に起承転結や対句などの制約があり、規則どおりの詩が作れるというだけで、中国ではインテリの証明でもあった。その上に読者を感動させる詩を作れるとなれば、人情に精通した一級の人物とみなされ、そうした人物を求めるために官吏登用試験である科挙に詩が課せられるようになったのだ。(p.42)
そのため、一つ一つの詩には、人の人生をかけるほどの現在からは考えられないほどの情熱が傾けられています。詩がどれほどの推敲と努力の上に成り立っているかを知れば、読者がその詩から得られるモノへの期待が高まります。
詩人として名を成せば、科挙に合格して進士になれなくても皇帝の側近くに仕えることも役人として遇されることも可能だった。現に、李白や杜甫は一時期そうした厚遇に与っている。そのためもあって詩人たちの詩に対する思いは妄執と呼べるほど凄まじいものだった。(p.130)
先生に高校で漢文を習っていたときには、漢文が好きなちょっと変わった先生というのと、なんかすごい人だと漠然と思うぐらいでしたが、この本を読むと深い知識とそれに裏打ちされた考察がすごいと見直しました。高校での授業の他は何をしているんだろうなと不思議でしたが、しっかりと研究をされていたのだと思いました。また、先生の祖父も知名度のある漢学者だということもこの本ではじめて知りました。
幸い祖父の佐久節は学識も知名度も共に備えた漢学者であり、漢詩の訳者でもあった。(p.4)
またあとがきを読み、最後の漢文の授業で、定年後に漢詩を作ることを勧めていたのを思い出しました。
というわけで、定年を迎えて時間的な余裕をできた読者には、ぜひとも漢詩を作ることをお勧めしたい。若い読者には、その時のための準備を始めていただきたい。(p.225)
ビジネスマンが泣いた「唐詩」一〇〇選
佐久 協 (著)
1 サラリーマン人生
2 人生の哀歓
3 飲食
4 青春
5 友情
6 旅情
7 望郷
8 戦乱

「国破れて山河在り」「昔聞く洞庭の水」「白髪三千丈」…。古来、誰もが暗誦した唐代の名詩。その作者たちは、多くが科挙の合格者であり、青春の輝きを謳歌した。しかしまもなく世知辛い現実に直面して、エリートだった自分もまた敗者であるということを知った。酒食に憂さを晴らし、友と別れ、旅情に涙し、望郷の念に胸を焦がしながら、詩作にわが身の哀歓をぶつけたのだ。当時の詩人たちの心情が、現代日本人のそれと何ら変わらないのに驚かされるだろう。本書では、字句や文法の吟味は横において、詩本来の内容やリズムを肌で感じられるような訳を試みた。
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Kyoto, Japan
なんとなく悲観的なムードのほかに違和感を感じた一時帰国中の話題としてはお笑いの矢島美容室に関するものです。海外にいるとお笑いブームにはついていけなくなります。僕にとって矢島美容室はそうした影響をモロに受けたブームでした。つまり最初にテレビで彼らを見たときに何の予備知識もなく見ることになりました。時期的に、おそらく見た場面は彼らの最後のライブだったようです。


矢島美容室 - Wikipedia
2008年12月20日国立代々木第一体育館で最初で最後のライブを開催され、その場で解散(帰国)が撤回される。
まず、見たときは片言の日本語をしゃべるフィリピン人が出てきたと感じました。しかしよく見ると日本人が変装しているようにも見え、どっちなんだろうと不思議に思っていました。それと同時に日本人が変装していないことを願いました。日本人が片言の外人のマネをして、会場全体で笑いものにしている図が耐えられないと感じたからです。僕はフランスでは完全な片言外人です。毎日3時間2年間勉強してもフランス語ネイティブから見たら、変なフランス語であることは疑いありません。それをネイティブがマネをしてみんなで笑っていたらやりきれない気分になると思うのです。せめて外人自身が面白おかしくやっていることを期待しました。しかし実際は日本人が外人のマネをしていたのです。少しショックを受けました。フランスではありえない現在の日本では許されるユーモアであると感じます。

さらに、彼らは「ニホンノミカタ -ネバダカラキマシタ-」という歌を歌います(歌詞はこちら)。
ニホンノミカタ -ネバダカラキマシタ-
(歌詞) パスポートもちゃんとあります。少しなら、YENも持ててます。
VISA(滞在許可)とお金と、パスポートと片言外人をお笑いのネタにするのはフランスでは少し深刻すぎます。やはり日本だからできる笑いなのではないでしょうか。

なおこのエントリーは、帰国当初に感じた違和感をつづっただけのもので、矢島美容室を批判しているわけではありません。お笑いがこの手の批判に怖じ気づいて、面白いことができなくなるほうが世の中に対する悪影響が強いと感じます。特に悲観的ムードが流れていると感じる今の日本にはもっとも必要なものは面白いものであるかもしれません。お笑い芸人は自分が面白いと信じるものをやり続けてほしいと願います。

ただ、僕自身、2年間日本を離れていてもお笑いの面白さを理解できなかったのは初めての経験でした。たとえば「そんなの関係ねー」は遅れて触れましたがちゃんと笑うことができたと思います。矢島美容室はマーケティング的には大成功を収めているようです。また、下のページでは矢部美容室をテレビで見たときの感想として肯定的に述べられています。

第45回:「矢島美容室」に学ぶ、長寿ブランド“とんねるず”のPR手法: NBonline(日経ビジネス オンライン)
どうですか?共感丸出しでしょう。いまの日本を外から見たふりをして、勇気づけている。ほんとは、政治家がすることなのでしょうが、日本の政治家には到底 頼れないから、エンターテイナーがやってやる。そんな心意気が見えてきて、思わず拍手してしまいました。楽しませながら、今の日本って変じゃない?と言っ ているのです。
今は当初、自身が感じた違和感の原因を知りたいという気分になっています。一つ思いつく原因の候補としては、やはりお笑いということで曲自体が冗談になっているというものでしょう。歌詞の”政治家嘘をつきません”、”先生は生徒守ります”、”税金無駄には使わないです”などすべて冗談仕立てになっていると解釈し、片言の外人も含めて、曲全体を笑い飛ばすことを期待されているのでしょうか?

関連:
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Kyoto, Japan
なんとなく悲観的なムードのほかに違和感を感じた一時帰国中の話題としてはお笑いの矢島美容室に関するものです。海外にいるとお笑いブームにはついていけなくなります。僕にとって矢島美容室はそうした影響をモロに受けたブームでした。つまり最初にテレビで彼らを見たときに何の予備知識もなく見ることになりました。時期的に、おそらく見た場面は彼らの最後のライブだったようです。
矢島美容室 - Wikipedia
2008年12月20日国立代々木第一体育館で最初で最後のライブを開催され、その場で解散(帰国)が撤回される。
まず、見たときは片言の日本語をしゃべるフィリピン人が出てきたと感じました。しかしよく見ると日本人が変装しているようにも見え、どっちなんだろうと不思議に思っていました。それと同時に日本人が変装していないことを願いました。日本人が片言の外人のマネをして、会場全体で笑いものにしている図が耐えられないと感じたからです。僕はフランスでは完全な片言外人です。毎日3時間2年間勉強してもフランス語ネイティブから見たら、変なフランス語であることは疑いありません。それをネイティブがマネをしてみんなで笑っていたらやりきれない気分になると思うのです。せめて外人自身が面白おかしくやっていることを期待しました。しかし実際は日本人が外人のマネをしていたのです。少しショックを受けました。フランスではありえない現在の日本では許されるユーモアであると感じます。

さらに、彼らは「ニホンノミカタ -ネバダカラキマシタ-」という歌を歌います(歌詞はこちら)。
ニホンノミカタ -ネバダカラキマシタ-
(歌詞) パスポートもちゃんとあります。少しなら、YENも持ててます。

VISA(滞在許可)とお金と、パスポートと片言外人をお笑いのネタにするのはフランスでは少し深刻すぎます。やはり日本だからできる笑いなのではないでしょうか。

なおこのエントリーは、帰国当初に感じた違和感をつづっただけのもので、矢島美容室を批判しているわけではありません。お笑いがこの手の批判に怖じ気づいて、面白いことができなくなるほうが世の中に対する悪影響が強いと感じます。特に悲観的ムードが流れていると感じる今の日本にはもっとも必要なものは面白いものであるかもしれません。お笑い芸人は自分が面白いと信じるものをやり続けてほしいと願います。

ただ、僕自身、2年間日本を離れていてもお笑いの面白さを理解できなかったのは初めての経験でした。たとえば「そんなの関係ねー」は遅れて触れましたがちゃんと笑うことができたと思います。矢島美容室はマーケティング的には大成功を収めているようです。また、下のページでは矢部美容室をテレビで見たときの感想として肯定的に述べられています。
第45回:「矢島美容室」に学ぶ、長寿ブランド“とんねるず”のPR手法: NBonline(日経ビジネス オンライン)
どうですか?共感丸出しでしょう。いまの日本を外から見たふりをして、勇気づけている。ほんとは、政治家がすることなのでしょうが、日本の政治家には到底 頼れないから、エンターテイナーがやってやる。そんな心意気が見えてきて、思わず拍手してしまいました。楽しませながら、今の日本って変じゃない?と言っ ているのです。
今は当初、自身が感じた違和感の原因を知りたいという気分になっています。一つ思いつく原因の候補としては、やはりお笑いということで曲自体が冗談になっているというものでしょう。歌詞の”政治家嘘をつきません”、”先生は生徒守ります”、”税金無駄には使わないです”などすべて冗談仕立てになっていると解釈し、片言の外人も含めて、曲全体を笑い飛ばすことを期待されているのでしょうか?

関連:一時帰国中の雑感「なんとなく悲観的」
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Paris, France
年末年始は、一年ぶりに帰国しています。現在帰国して1週間がたちました。帰国した当初の第一感触を忘れないうちに書き留めておこうと思います。まず、家族が用意してくれた寿司を食べながら見たテレビのトップニュースがすごく暗かったのに気づきました。第一のニュースが神奈川県の警官が二人組みに拳銃を奪われた事件。第二の事件は北海道のコンビニで菓子パンに待ち針が混入された事件。3つ目は世田谷一家殺人事件の続報でした。

菓子パンに待ち針が混入された事件では、リポーターがターゲットとなった菓子パンを引き裂いて中身を見せていました。弟はお気に入りの菓子パンだったらしく、もしも自分だったらと想像したでしょう。僕も口の中に待ち針が刺さった様子を想像して、血の味を感じた気がしました。

でもよく考えたら、何万とあるコンビニの中の、しかも北海道で起きた事件は多くの人にとってトップニュースにするほど関連あるものではありません。多くの人にとって、菓子パンを見たときに思い出すぐらいの、なんとなくイヤな感じがするニュースでしかないでしょう。例えば、これがただのいたずらではなく、派遣社員の問題や、介護疲れの問題など誰もが関係する問題が背景にあると判明したりすれば、違ってくるとは思いますが。僕がこのニュースを見たときは視聴者がその背景を想像で補うしかないような漠然とイヤなニュースとしか感じませんでした。

3つのトップニュースが終わってから、閣僚会議で麻生首相がテレビに映りました。フランスでは大統領が最初に映ることが多いのでなんとなく違和感を感じました。それからトップニュースに三つの暗い話題を持ってくることによる視聴者にあたえる悲観的なイメージを想像しました。日本に充満する悲観的空気に追従するためにニュースで暗い話題を放送しているのか、暗い話題が日本の悲観的な空気を生み出しているのか、なかなか興味深いと思います。

次に、自動車会社に勤める友人は不景気を嘆いていました。確かに今年の9月以来、自動車が売れづらい現状は聞いているために、妥当だとは思います。しかし考えてみれば、90年にバブルがはじけて以来20年近くずっと不況といわれている現状を考えると、不況といわれている状況が通常状態だと言うことも可能なはずです。さらに、彼はこんな状況では最低限度の生活も脅かされると嘆いていました。しかし、彼は今年11月にスポーツワゴンの新車を買っているのです。しかも、カーナビやかっこいい追加装備も装着していました。日本とフランス両方あわせた僕の周りの同年代の友人すべてをあわせても一番リッチな生活をしているといっても過言ではありません。少し悲観的になりすぎている感想を持ちました。

日本全体が余分に悲観的になっている気がします。現在感じている悲観的な空気や、将来の不安が本当に妥当なものなのか、もう少し楽観的な観点から考えてみることをお勧めします。
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Paris, France
年末年始は、一年ぶりに帰国しています。現在帰国して1週間がたちました。帰国した当初の第一感触を忘れないうちに書き留めておこうと思います。まず、家族が用意してくれた寿司を食べながら見たテレビのトップニュースがすごく暗かったのに気づきました。第一のニュースが神奈川県の警官が二人組みに拳銃を奪われた事件。第二の事件は北海道のコンビニで菓子パンに待ち針が混入された事件。3つ目は世田谷一家殺人事件の続報でした。

菓子パンに待ち針が混入された事件では、リポーターがターゲットとなった菓子パンを引き裂いて中身を見せていました。弟はお気に入りの菓子パンだったらしく、もしも自分だったらと想像したでしょう。僕も口の中に待ち針が刺さった様子を想像して、血の味を感じた気がしました。

でもよく考えたら、何万とあるコンビニの中の、しかも北海道で起きた事件は多くの人にとってトップニュースにするほど関連あるものではありません。多くの人にとって、菓子パンを見たときに思い出すぐらいの、なんとなくイヤな感じがするニュースでしかないでしょう。例えば、これがただのいたずらではなく、派遣社員の問題や、介護疲れの問題など誰もが関係する問題が背景にあると判明したりすれば、違ってくるとは思いますが。僕がこのニュースを見たときは視聴者がその背景を想像で補うしかないような漠然とイヤなニュースとしか感じませんでした。

3つのトップニュースが終わってから、閣僚会議で麻生首相がテレビに映りました。フランスでは大統領が最初に映ることが多いのでなんとなく違和感を感じました。それからトップニュースに三つの暗い話題を持ってくることによる視聴者にあたえる悲観的なイメージを想像しました。日本に充満する悲観的空気に追従するためにニュースで暗い話題を放送しているのか、暗い話題が日本の悲観的な空気を生み出しているのか、なかなか興味深いと思います。

次に、自動車会社に勤める友人は不景気を嘆いていました。確かに今年の9月以来、自動車が売れづらい現状は聞いているために、妥当だとは思います。しかし考えてみれば、90年にバブルがはじけて以来20年近くずっと不況といわれている現状を考えると、不況といわれている状況が通常状態だと言うことも可能なはずです。さらに、彼はこんな状況では最低限度の生活も脅かされると嘆いていました。しかし、彼は今年11月にスポーツワゴンの新車を買っているのです。しかも、カーナビやかっこいい追加装備も装着していました。日本とフランス両方あわせた僕の周りの同年代の友人すべてをあわせても一番リッチな生活をしているといっても過言ではありません。少し悲観的になりすぎている感想を持ちました。

日本全体が余分に悲観的になっている気がします。現在感じている悲観的な空気や、将来の不安が本当に妥当なものなのか、もう少し楽観的な観点から考えてみることをお勧めします。
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Paris, France
博士課程に進む意義」のエントリが現在、このブログで一番のはてなブックマーク(10個)を集めていることから、このブログも博士課程の学生や博士号取得者の目に触れているのかも知れません。このエントリではフランス国立情報学自動制御研究所 (INRIA) の研究員募集のお知らせを掲載しようと思います。

まず、「INRIAとはフランス政府研究省および、経済財政産業省が共同管理するフランス国立研究所である。 1979年に、フランスの情報・制御分野の中心となる研究機関として設立された。 フランス国内に8ヶ所の研究施設もち、3000人以上の職員を抱える大規模な研究所(wikipediaより)」です。フランスやヨーロッパはもちろん世界でも評価の高い研究機関です。

[書評] 高学歴ワーキングプア」では、博士課程を修了した人びとによる悲劇が描かれていましたが、状況説明は全て日本の大学院をターゲットとしていました。一つの解答として、海外のに飛び出して研究員になるという道もあると思います。また、同書では「博士号をさして、「足の裏の米粒」などと揶揄する声も耳にすることが少なくない。その意味は、「とっても食えないが、取らないと気持ちが悪い」だ。(P.188)」と例えられていますが、全ての研究職に博士号が必要とされています。

2008年12月19日からフォームが利用可能になり、2009年2月16日に締め切りです。
フランスで研究する意義については「[まとめ] フランス留学のススメ」でいろいろ書いているので、参考にしてください。僕はフランスに来たらフランス語を学ぶことを勧めますが、それでも研究を行うにあたっては、フランス語が出来なくとも英語で何とかなります。この辺りの事情は「留学するのにフランス語は必要か」が参考になると思います。また、僕自身の経験としてフランス語がまったくゼロでも1年間しっかり学習すれば、フランス語でミーティングに参加して議論するぐらいには上達するはずです→(フランス語の勉強の仕方(まとめ))。

フランスへの研究留学を全てポジティブに書いてきましたが、フランスに渡ってみてうまく行くかどうかは、本当は分かりません。分からない以上、チャレンジすることは運を天に任せる行為になります。現在30歳ぐらいの研究者がその後定年まで30年ぐらい研究を行う際に、フランスで数年過ごす価値はどれぐらいのものなのか。熟考し、他の道と徹底的に比較したのち、どちらかを選びその中で努力する。日本を選んでもフランスを選んでも、その中で運が作用することは同じことです。
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Paris, France
博士課程に進む意義」のエントリが現在、このブログで一番のはてなブックマーク(10個)を集めていることから、このブログも博士課程の学生や博士号取得者の目に触れているのかも知れません。このエントリではフランス国立情報学自動制御研究所 (INRIA) の研究員募集のお知らせを掲載しようと思います。

まず、「INRIAとはフランス政府研究省および、経済財政産業省が共同管理するフランス国立研究所である。 1979年に、フランスの情報・制御分野の中心となる研究機関として設立された。 フランス国内に8ヶ所の研究施設もち、3000人以上の職員を抱える大規模な研究所(wikipediaより)」です。フランスやヨーロッパはもちろん世界でも評価の高い研究機関です。

[書評] 高学歴ワーキングプア」では、博士課程を修了した人びとによる悲劇が描かれていましたが、状況説明は全て日本の大学院をターゲットとしていました。一つの解答として、海外のに飛び出して研究員になるという道もあると思います。また、同書では「博士号をさして、「足の裏の米粒」などと揶揄する声も耳にすることが少なくない。その意味は、「とっても食えないが、取らないと気持ちが悪い」だ。(P.188)」と例えられていますが、全ての研究職に博士号が必要とされています。

2008年12月19日からフォームが利用可能になり、2009年2月16日に締め切りです。
フランスで研究する意義については「[まとめ] フランス留学のススメ」でいろいろ書いているので、参考にしてください。僕はフランスに来たらフランス語を学ぶことを勧めますが、それでも研究を行うにあたっては、フランス語が出来なくとも英語で何とかなります。この辺りの事情は「留学するのにフランス語は必要か」が参考になると思います。また、僕自身の経験としてフランス語がまったくゼロでも1年間しっかり学習すれば、フランス語でミーティングに参加して議論するぐらいには上達するはずです→(フランス語の勉強の仕方(まとめ))。

フランスへの研究留学を全てポジティブに書いてきましたが、フランスに渡ってみてうまく行くかどうかは、本当は分かりません。分からない以上、チャレンジすることは運を天に任せる行為になります。現在30歳ぐらいの研究者がその後定年まで30年ぐらい研究を行う際に、フランスで数年過ごす価値はどれぐらいのものなのか。熟考し、他の道と徹底的に比較したのち、どちらかを選びその中で努力する。日本を選んでもフランスを選んでも、その中で運が作用することは同じことです。
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Paris, France
今年5月に「フランス語の勉強の仕方」を書いてから、約半年が経ちました。5月に書いたエントリーのように、ポッドキャストでフランス語のNHKニュースを聞いて、全文スクリプトを朗読し、知らない単語を覚えていくという方法は、なかなかいい方法なのではないかと思います。しかし、毎日同じ方法で勉強していると伸びてくる能力が固定化してきます。今のようなやり方では、当初意図していたように特に単語聞き取りが伸びます。登録した単語が5000語を越え(→500日間、1日フランス語10単語を覚える)、大抵の聞き取りは出来るようになってきました。

単語と聞き取りが出来るに従って、自分の力不足を感じるのが会話能力です。会話で詰まったり、瞬発的な反応が遅れたりするために、みんなで会話を楽しんでいるような場面で思うように会話に参加できなかったりします。職場には我先にとしゃべる人が多くて、静かにしていると会話を聞いているだけのようになってしまったりします。

上の5月に書いたエントリでは単語と聞き取りを重視していたため、会話(特に自分が話を切り出す方)の能力が伸ばせない欠点があります。ポッドキャスト版のフランス語NHKニュースは、アナウンサーが原稿を読むスタイルのフランス語なので、実際の会話ではよく使われる疑問形や簡単形、命令形、また感嘆詞などが出てきません。また、アナウンサーは早口なフランス人よりはかなりゆっくり目にしゃべっているので、実際の会話の応酬についていけないこともあります。また、当初大変だった聞き取りや朗読も自分の能力の向上によって毎日の勉強の負荷が減ってきていました。

そこで、主に会話の能力を上げることを目的とした勉強法を実践することにしました。同じくポットキャストを使うのですが、今度は複数の人物が会話しながら進んでいくフランス語を母国語とする人達が聞くポッドキャストを選択しました。疑問形や感嘆詞、応答を考える間や、会話の呼吸などが吸収できます。正直、NHKの方でも全て聞き取れている訳ではないので、まだ少しつらいですが、忍耐強くやっていけば慣れてくるのではないかと思います。

今回選んだポットキャストは以下の通りです。
  1. Europe1 - Nicolas Canteloup - Revue de presque
    現時点でフランス語ポッドキャストのランキング一位でした。下のビデオに出てくるNicolas CANTELOUPが最新のニュースについて面白いコメントをするタイプのようです。


  2. RMC - De quoi je me mail
    ハイテク関係の最新情報を扱うポッドキャストです。

    マルチメディアの新製品、インターネットに関係した技術革新を細かく分析、Micro Hebdoの代表の主任の編集者Stephan Schreiberなどのスペシャリストによる分かりやすくリラックスした雰囲気で大衆向けに説明する。
    Les nouveautés du multimédia et les innovations technologiques liées à l'Internet sont décortiquées et expliquées pour le grand public, dans une ambiance conviviale et détendue, par des spécialistes tels que Stephan Schreiber, rédacteur en chef délégué de Micro Hebdo.
1の方は、まだまだ笑いのポイントが分かりません。言葉遊びというか、ニュアンスが分からないと難しいのかも知れません。2の方は、facebook、windows 7、地デジなど新しい製品について説明されていて、個人的興味からなかなか面白いと感じています。どちらも、全文スクリプトが手に入らないので、新出単語のチェックやアナウンサーをまねて全文を朗読したりすることが出来ません。単語と朗読については他の方法で進めて必要があります。
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Paris, France
今年5月に「フランス語の勉強の仕方」を書いてから、約半年が経ちました。5月に書いたエントリーのように、ポッドキャストでフランス語のNHKニュースを聞いて、全文スクリプトを朗読し、知らない単語を覚えていくという方法は、なかなかいい方法なのではないかと思います。しかし、毎日同じ方法で勉強していると伸びてくる能力が固定化してきます。今のようなやり方では、当初意図していたように特に単語聞き取りが伸びます。登録した単語が5000語を越え(→500日間、1日フランス語10単語を覚える)、大抵の聞き取りは出来るようになってきました。

単語と聞き取りが出来るに従って、自分の力不足を感じるのが会話能力です。会話で詰まったり、瞬発的な反応が遅れたりするために、みんなで会話を楽しんでいるような場面で思うように会話に参加できなかったりします。職場には我先にとしゃべる人が多くて、静かにしていると会話を聞いているだけのようになってしまったりします。

上の5月に書いたエントリでは単語と聞き取りを重視していたため、会話(特に自分が話を切り出す方)の能力が伸ばせない欠点があります。ポッドキャスト版のフランス語NHKニュースは、アナウンサーが原稿を読むスタイルのフランス語なので、実際の会話ではよく使われる疑問形や簡単形、命令形、また感嘆詞などが出てきません。また、アナウンサーは早口なフランス人よりはかなりゆっくり目にしゃべっているので、実際の会話の応酬についていけないこともあります。また、当初大変だった聞き取りや朗読も自分の能力の向上によって毎日の勉強の負荷が減ってきていました。

そこで、主に会話の能力を上げることを目的とした勉強法を実践することにしました。同じくポットキャストを使うのですが、今度は複数の人物が会話しながら進んでいくフランス語を母国語とする人達が聞くポッドキャストを選択しました。疑問形や感嘆詞、応答を考える間や、会話の呼吸などが吸収できます。正直、NHKの方でも全て聞き取れている訳ではないので、まだ少しつらいですが、忍耐強くやっていけば慣れてくるのではないかと思います。

今回選んだポットキャストは以下の通りです。
  1. Europe1 - Nicolas Canteloup - Revue de presque
    現時点でフランス語ポッドキャストのランキング一位でした。下のビデオに出てくるNicolas CANTELOUPが最新のニュースについて面白いコメントをするタイプのようです。


  2. RMC - De quoi je me mail
    ハイテク関係の最新情報を扱うポッドキャストです。
    マルチメディアの新製品、インターネットに関係した技術革新を細かく分析、Micro Hebdoの代表の主任の編集者Stephan Schreiberなどのスペシャリストによる分かりやすくリラックスした雰囲気で大衆向けに説明する。
    Les nouveautés du multimédia et les innovations technologiques liées à l'Internet sont décortiquées et expliquées pour le grand public, dans une ambiance conviviale et détendue, par des spécialistes tels que Stephan Schreiber, rédacteur en chef délégué de Micro Hebdo.
1の方は、まだまだ笑いのポイントが分かりません。言葉遊びというか、ニュアンスが分からないと難しいのかも知れません。2の方は、facebook、windows 7、地デジなど新しい製品について説明されていて、個人的興味からなかなか面白いと感じています。どちらも、全文スクリプトが手に入らないので、新出単語のチェックやアナウンサーをまねて全文を朗読したりすることが出来ません。単語と朗読については他の方法で進めて必要があります。
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美しい国へ (文春新書)
2006年9月26日に総理大臣になった安倍氏がその2ヶ月前に出版した本です。1年ほどで突然政権を投げ出した安倍氏の言葉と言うことで、全てがむなしく響いてしまうのは避けられないでしょう。それでも、たった1年ほど前まで1年間首相を務めた人がどんなことを考えていたかを知ることは、少しは意味があることだと思います。彼は正当な手段で首相に上り詰めたので、国民の期待と信頼を背負ってリーダーとなったと見ることが出来るからです。日本語の本が貴重であるパリにおいて本書をセールで1ユーロで得られたことはお得でした。

政治家の本は、たいてい政敵に揚げ足を取られないように、全体的に詳しく突っ込んで書かれていません。つまり、「総論賛成、各論反対」の傾向において反対を避けるように、各論を避けるように書かれています。良いことというのは、どんな政治家でも決まって口にするもので、この本も多くの政治家の本のように高い志が書かれています。政治家の評価は実行にあるので、その点では首相を務めた期間の安倍氏の評価は低いものとならざるを得ないでしょう。以下の言も守られなかったことを見たりすると、その信念さえも疑念が生じてしまいます。今日この時期に本書を読むと、全体的に良い言葉がむなしく響いてしまいます。
確たる信念をもち、たじろがず、批判を覚悟で臨む——新たな決意だった。(P.41)
この本でまっとうだと思ったところと、疑問だった点を挙げておこうと思います。まっとうだと思った点は、(すこし引っかかった点もありましたが)ナショナリズムに関する記述です。
心の底から、かれらとコミュニケーションをとろうと思ったら、自らのアイデンティティをまず確認しておかなければならない。...(略)...かれらは、わたしたちを日本人、つまり国家に帰属している個人であることを前提として向き合っているのである。はじめて出会う外国人に、「あなたはどちらから来ましたか」と聞かれて、「わたしは地球市民です」と答えて信用されるだろうか。(P.93)
「わたしは地球市民です」と答えるタイプの左派の人達と比べると、自分に日本人というレッテルがついていることを自覚している人の方が無理がない考え方だと思います。地球上すべての人間が努力と能力によって、平等に扱われるのは確かに理想ですが、現状はそうではありません。偶然生まれた国と時代によって、食べるのにも困ったり、教育の水準が低かったり、はたまた気候に恵まれていたり、天然資源の恩恵を受けられたりします。こういった不平等を是正するには全ての国家を廃止するか、全ての人に全ての国籍を無条件で選択可能にするといった、思い切った時代の変化が必要です。現状では国籍変更がかなり難しい上、その人の持つ国籍がその人に一生ついてまわります。とはいえ、右派で名高い安倍氏が、だから国家を大切にしなさいというと、摩擦を引き起こすことは容易に分かりますが。

他国では、日本のようにナショナリズムを押さえつけることはないということを説明する部分ではフランスのワールドカップ優勝の事例が使われています。
優勝の夜、人びとは国家「ラ・マルセイエーズ」を歌って熱狂し、百万人以上がつどった凱旋門には「メルシー・レ・ブリュ」の電光掲示板が浮かび上がった。サッカーのもたらしたナショナリズムが、移民に対する反感を乗り越えた瞬間だった。(p.81)
フランスもナショナリズムを高揚させているのだから、日本だって良いじゃないかと言うことなのでしょうが、これはまったく次元が違います。フランスは日本とちがって多民族国家です。フランス人でも顔もちがえば、宗教、習慣だってちがう。一つにまとまるには、国としての共通体験を増やしていくしかないという事情があります。偶然手に入れたフィガロ紙にも優勝の喜びが書かれていましたが(→「フランス人である幸せ (Le Figaro 1998)」)、フランス人が移民に対する反感を乗り越えたと言うのは、率直に言って間違った認識だと思います。それから7年経った2005年の暴動を見ても明らかです。フランスは今でも移民対策は完全に解決されている訳ではなく、より良い国づくりのために苦しみ続けていると思います。

少子化の問題に関する以下の部分は、政治家が国民のがんばりに期待しているようで、違和感を感じます。
また、従来の少子化対策についての議論を見ていて感じることは、子供を育てることの喜び、家族を持つことの素晴らしさといった視点が抜け落ちていたのではないか、ということだ。わたしのなかでは、子供を産み育てることの損得を越えた価値を忘れてはならないという意識がさらに強くなってきている。(p.173)
子どもを持つことによる喜びは人びとが自然に感じるもので、政治家が国民に損得を越えて子どもを作ってくれと言うのは、間違っていると思います。以下のように、個人的な意見として書くとなんとなく共感できるので、書き方の違いかも知れませんが。
わたしには子どもがいない。だからこそよけい感じるのかもしれないが、家族がいて、子どもがいるというのは、損得勘定抜きでいいものだなあ、と思うことがよくある。(p.216)
美しい国へ (文春新書)
安倍 晋三 (著)

第1章 わたしの原点
第2章 自立する国家
第3章 ナショナリズムとはなにか
第4章 日米同盟の構図
第5章 日本とアジアそして中国
第6章 少子国家の未来
第7章 教育の再生

自信と誇りのもてる日本へ。「日本」という国のかたちが変わろうとしている。保守の姿、対米外交、アジア諸国との関係、社会保障の将来、教育の再生、真のナショナリズムのあり方…その指針を明示する必読の書。
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美しい国へ (文春新書)
2006年9月26日に総理大臣になった安倍氏がその2ヶ月前に出版した本です。1年ほどで突然政権を投げ出した安倍氏の言葉と言うことで、全てがむなしく響いてしまうのは避けられないでしょう。それでも、たった1年ほど前まで1年間首相を務めた人がどんなことを考えていたかを知ることは、少しは意味があることだと思います。彼は正当な手段で首相に上り詰めたので、国民の期待と信頼を背負ってリーダーとなったと見ることが出来るからです。日本語の本が貴重であるパリにおいて本書をセールで1ユーロで得られたことはお得でした。

政治家の本は、たいてい政敵に揚げ足を取られないように、全体的に詳しく突っ込んで書かれていません。つまり、「総論賛成、各論反対」の傾向において反対を避けるように、各論を避けるように書かれています。良いことというのは、どんな政治家でも決まって口にするもので、この本も多くの政治家の本のように高い志が書かれています。政治家の評価は実行にあるので、その点では首相を務めた期間の安倍氏の評価は低いものとならざるを得ないでしょう。以下の言も守られなかったことを見たりすると、その信念さえも疑念が生じてしまいます。今日この時期に本書を読むと、全体的に良い言葉がむなしく響いてしまいます。
確たる信念をもち、たじろがず、批判を覚悟で臨む——新たな決意だった。(P.41)
この本でまっとうだと思ったところと、疑問だった点を挙げておこうと思います。まっとうだと思った点は、(すこし引っかかった点もありましたが)ナショナリズムに関する記述です。
心の底から、かれらとコミュニケーションをとろうと思ったら、自らのアイデンティティをまず確認しておかなければならない。...(略)...かれらは、わたしたちを日本人、つまり国家に帰属している個人であることを前提として向き合っているのである。はじめて出会う外国人に、「あなたはどちらから来ましたか」と聞かれて、「わたしは地球市民です」と答えて信用されるだろうか。(P.93)
「わたしは地球市民です」と答えるタイプの左派の人達と比べると、自分に日本人というレッテルがついていることを自覚している人の方が無理がない考え方だと思います。地球上すべての人間が努力と能力によって、平等に扱われるのは確かに理想ですが、現状はそうではありません。偶然生まれた国と時代によって、食べるのにも困ったり、教育の水準が低かったり、はたまた気候に恵まれていたり、天然資源の恩恵を受けられたりします。こういった不平等を是正するには全ての国家を廃止するか、全ての人に全ての国籍を無条件で選択可能にするといった、思い切った時代の変化が必要です。現状では国籍変更がかなり難しい上、その人の持つ国籍がその人に一生ついてまわります。とはいえ、右派で名高い安倍氏が、だから国家を大切にしなさいというと、摩擦を引き起こすことは容易に分かりますが。

他国では、日本のようにナショナリズムを押さえつけることはないということを説明する部分ではフランスのワールドカップ優勝の事例が使われています。
優勝の夜、人びとは国家「ラ・マルセイエーズ」を歌って熱狂し、百万人以上がつどった凱旋門には「メルシー・レ・ブリュ」の電光掲示板が浮かび上がった。サッカーのもたらしたナショナリズムが、移民に対する反感を乗り越えた瞬間だった。(p.81)
フランスもナショナリズムを高揚させているのだから、日本だって良いじゃないかと言うことなのでしょうが、これはまったく次元が違います。フランスは日本とちがって多民族国家です。フランス人でも顔もちがえば、宗教、習慣だってちがう。一つにまとまるには、国としての共通体験を増やしていくしかないという事情があります。偶然手に入れたフィガロ紙にも優勝の喜びが書かれていましたが(→「フランス人である幸せ (Le Figaro 1998)」)、フランス人が移民に対する反感を乗り越えたと言うのは、率直に言って間違った認識だと思います。それから7年経った2005年の暴動を見ても明らかです。フランスは今でも移民対策は完全に解決されている訳ではなく、より良い国づくりのために苦しみ続けていると思います。

少子化の問題に関する以下の部分は、政治家が国民のがんばりに期待しているようで、違和感を感じます。
また、従来の少子化対策についての議論を見ていて感じることは、子供を育てることの喜び、家族を持つことの素晴らしさといった視点が抜け落ちていたのではないか、ということだ。わたしのなかでは、子供を産み育てることの損得を越えた価値を忘れてはならないという意識がさらに強くなってきている。(p.173)
子どもを持つことによる喜びは人びとが自然に感じるもので、政治家が国民に損得を越えて子どもを作ってくれと言うのは、間違っていると思います。以下のように、個人的な意見として書くとなんとなく共感できるので、書き方の違いかも知れませんが。
わたしには子どもがいない。だからこそよけい感じるのかもしれないが、家族がいて、子どもがいるというのは、損得勘定抜きでいいものだなあ、と思うことがよくある。(p.216)
美しい国へ (文春新書)
安倍 晋三 (著)

第1章 わたしの原点
第2章 自立する国家
第3章 ナショナリズムとはなにか
第4章 日米同盟の構図
第5章 日本とアジアそして中国
第6章 少子国家の未来
第7章 教育の再生

自信と誇りのもてる日本へ。「日本」という国のかたちが変わろうとしている。保守の姿、対米外交、アジア諸国との関係、社会保障の将来、教育の再生、真のナショナリズムのあり方…その指針を明示する必読の書。
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日露戦争に投資した男―ユダヤ人銀行家の日記 (新潮新書)
ロシアとの戦争には国家予算の6倍以上の戦費が必要でそのうち四割、つまり国家予算2.5年分のお金を貸してくれた人物がシフという人物です。この本はシフの生涯について書かれているものではなく、第一章にシフと日本の関わり、第二章に原題「Our Journey to Japan」を翻訳したものが収められています。

日露戦争においてシフが日本に肩入れした理由は、ユダヤの同胞を苦しめるロシアを牽制するためだと言われています。しかし、投資家としてのシフはもちろん投資の採算も計算に入れていたことでしょう。
全米ユダヤ人協会会長も務めるシフという人物が、ユダヤ同胞に圧政を敷くロシアに打撃を与えたいと考え、日本を支援したことには疑いを入れない。しかし、フランクフルトからアメリカに来たドイツ系アメリカ人でありながらアメリカ金融界の頂点にた取り付いた男が、日本に肩入れすることにビジネス・チャンスを見いだしたとしても矛盾しない。(p.44)
つまりシフは、ユダヤ人として反ロシアの姿勢をとったことと、日本に対して投資対象としての魅力を感じていたことのどちらもがあったと考えられます。シフの中でどちらの考え方が優勢であったかは興味深いです。種明かしのようで心苦しいですが、あとがきに、ある教授の分析として、投資対象の日本という考えが60パーセントを占めていたとの意見が提示されています。
二〇〇五年五月に小村寿太郎の生地・宮崎県飫肥(現・日南市)で開催された「日露戦争・ポーツマス条約締結百周年記念国際シンポジウム」で、パネリストからシフの動機を問われた高橋是清研究科のリチャード・スメサースト(米ピッツバーグ大学教授)が「[経済的動機が]六〇パーセント」と答えたのが印象的だった。(p.212)
日本を投資対象としての見ている割合が60パーセントというのは、どう感じますか。その時代で最も名高く有能な投資家が日本の国家予算の倍以上の資金を運用するのに40パーセントも運用益以外の検討事項が入るというのは、相当高い割合だと感じました。

シフの日本滞在の印象は非常に良好です。また、日本人がシフに対する態度は国が始まって以来最大の敬意を示すような対応です。だれもが日露戦争中のシフの好意に対し感謝を示し、代金を受け取らない日本人も書かれています(シフは無理矢理払いますが)。即興で日本画を描く催しで、シフは感動します。
こういった日本流のもてなし方は、実に素晴らしい。またもその好例を見せてもらったわけだ。しかし、駐日アメリカ代理公使のウィルソン氏がこの席で語ったところによると、日本滞在が長い人でも、来日して一ヶ月足らずの我々が味わっているこのような機会を持ったことがない人が多いという。(p.144)
また、日記のいろいろな部分から日本に対して好感を持っていることが分かります。
裁縫教室やいろいろな学科ものぞいてみたが、あらゆることに真剣かつ几帳面な態度で取り組むのには感動した。少女達の慎み深さ、機転、礼儀正しさは際立っていたが、庶民さえも例外なく、親切で謙虚で行儀の良い日本人という従来の印象が深まるだけのことだった。(p.160)
この日記は毎日詳細に書かれいるのは、何故なんだろうと不思議に思いながら読み進んでいきますが、最後にこの日記の意図が明らかになります。シフは「急激に変貌する文明や今後の歴史で重要な役割を演ずる国々への興味」を書きとめておくことを動機としていたようです。
この旅は生涯最大の出来事で、この後も長年にわたって回顧することを許されたい。おそらくこの楽しい旅行記が、われわれの死後も孫や子に対し、急激に変貌する文明や今後の歴史で重要な役割を演ずる国々への興味を刺激してくれることだろう。(p.210)
日露戦争に投資した男―ユダヤ人銀行家の日記 (新潮新書)
田畑 則重 (著)

第1章 ウォール街の巨人ジェイコブ・シフ高橋是清への指令
  • 開戦前夜の「困難」
  • ロンドンでの邂逅
  • 戦場以外の地道な戦略 ほか
第2章 シフ滞日記—Our Journey to Japan
  • ニューヨークから大陸横断鉄道の旅(一九〇六年二月二二日~三月七日)
  • マンチュリア号でハワイを経て横浜へ(三月八日~二四日)
  • ミカドの謁見。すばらしい午餐会(三月二五日~二八日)
  • ミカドの都。上野、増上寺、招魂社(三月二九日~四月一日) ほか
ジェイコブ・シフ、ドイツ系ユダヤ人でウォール街を代表する投資銀行家—。この男の助けがなければ、日本は日露戦争に勝てなかった。国家予算の六倍以上の 戦費をつぎ込み、継戦不可能というギリギリで掴んだ戦勝。その戦費の約四割を調達したのがシフだ。なぜ彼は極東の新興国日本を支援したのか?その生涯、対 日支援の動機とともに、叙勲のために招待された際の「滞日記」を、日本にはじめて紹介する。
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日露戦争に投資した男―ユダヤ人銀行家の日記 (新潮新書)
ロシアとの戦争には国家予算の6倍以上の戦費が必要でそのうち四割、つまり国家予算2.5年分のお金を貸してくれた人物がシフという人物です。この本はシフの生涯について書かれているものではなく、第一章にシフと日本の関わり、第二章に原題「Our Journey to Japan」を翻訳したものが収められています。

日露戦争においてシフが日本に肩入れした理由は、ユダヤの同胞を苦しめるロシアを牽制するためだと言われています。しかし、投資家としてのシフはもちろん投資の採算も計算に入れていたことでしょう。
全米ユダヤ人協会会長も務めるシフという人物が、ユダヤ同胞に圧政を敷くロシアに打撃を与えたいと考え、日本を支援したことには疑いを入れない。しかし、フランクフルトからアメリカに来たドイツ系アメリカ人でありながらアメリカ金融界の頂点にた取り付いた男が、日本に肩入れすることにビジネス・チャンスを見いだしたとしても矛盾しない。(p.44)
つまりシフは、ユダヤ人として反ロシアの姿勢をとったことと、日本に対して投資対象としての魅力を感じていたことのどちらもがあったと考えられます。シフの中でどちらの考え方が優勢であったかは興味深いです。種明かしのようで心苦しいですが、あとがきに、ある教授の分析として、投資対象の日本という考えが60パーセントを占めていたとの意見が提示されています。
二〇〇五年五月に小村寿太郎の生地・宮崎県飫肥(現・日南市)で開催された「日露戦争・ポーツマス条約締結百周年記念国際シンポジウム」で、パネリストからシフの動機を問われた高橋是清研究科のリチャード・スメサースト(米ピッツバーグ大学教授)が「[経済的動機が]六〇パーセント」と答えたのが印象的だった。(p.212)
日本を投資対象としての見ている割合が60パーセントというのは、どう感じますか。その時代で最も名高く有能な投資家が日本の国家予算の倍以上の資金を運用するのに40パーセントも運用益以外の検討事項が入るというのは、相当高い割合だと感じました。

シフの日本滞在の印象は非常に良好です。また、日本人がシフに対する態度は国が始まって以来最大の敬意を示すような対応です。だれもが日露戦争中のシフの好意に対し感謝を示し、代金を受け取らない日本人も書かれています(シフは無理矢理払いますが)。即興で日本画を描く催しで、シフは感動します。
こういった日本流のもてなし方は、実に素晴らしい。またもその好例を見せてもらったわけだ。しかし、駐日アメリカ代理公使のウィルソン氏がこの席で語ったところによると、日本滞在が長い人でも、来日して一ヶ月足らずの我々が味わっているこのような機会を持ったことがない人が多いという。(p.144)
また、日記のいろいろな部分から日本に対して好感を持っていることが分かります。
裁縫教室やいろいろな学科ものぞいてみたが、あらゆることに真剣かつ几帳面な態度で取り組むのには感動した。少女達の慎み深さ、機転、礼儀正しさは際立っていたが、庶民さえも例外なく、親切で謙虚で行儀の良い日本人という従来の印象が深まるだけのことだった。(p.160)
この日記は毎日詳細に書かれいるのは、何故なんだろうと不思議に思いながら読み進んでいきますが、最後にこの日記の意図が明らかになります。シフは「急激に変貌する文明や今後の歴史で重要な役割を演ずる国々への興味」を書きとめておくことを動機としていたようです。
この旅は生涯最大の出来事で、この後も長年にわたって回顧することを許されたい。おそらくこの楽しい旅行記が、われわれの死後も孫や子に対し、急激に変貌する文明や今後の歴史で重要な役割を演ずる国々への興味を刺激してくれることだろう。(p.210)
日露戦争に投資した男―ユダヤ人銀行家の日記 (新潮新書)
田畑 則重 (著)

第1章 ウォール街の巨人ジェイコブ・シフ高橋是清への指令
  • 開戦前夜の「困難」
  • ロンドンでの邂逅
  • 戦場以外の地道な戦略 ほか
第2章 シフ滞日記—Our Journey to Japan
  • ニューヨークから大陸横断鉄道の旅(一九〇六年二月二二日~三月七日)
  • マンチュリア号でハワイを経て横浜へ(三月八日~二四日)
  • ミカドの謁見。すばらしい午餐会(三月二五日~二八日)
  • ミカドの都。上野、増上寺、招魂社(三月二九日~四月一日) ほか
ジェイコブ・シフ、ドイツ系ユダヤ人でウォール街を代表する投資銀行家—。この男の助けがなければ、日本は日露戦争に勝てなかった。国家予算の六倍以上の 戦費をつぎ込み、継戦不可能というギリギリで掴んだ戦勝。その戦費の約四割を調達したのがシフだ。なぜ彼は極東の新興国日本を支援したのか?その生涯、対 日支援の動機とともに、叙勲のために招待された際の「滞日記」を、日本にはじめて紹介する。
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Paris, France
今月は、投稿エントリは15と過去最低でしたが、先月からほぼ横ばいの約17000アクセスでした。4月にブログを開設して、初めて登録フィード数が100を越えた日が2度ほどありました。登録していただいている方ありがとうございます。

また、今月は8ヶ月目にしてやっと、このブログを開設した動機である「[まとめ] フランス留学のススメ」を書き終えました。このブログは、日本からフランスに留学している理系の学生が少ないのは、フランスに留学に来る利点が正しく伝わっていないからじゃないかと思いたって書き始めました。普通の研究者、技術者になりたい学生は日本の大学に残るか、アメリカに留学すると思います。日米の関係は日本にとって最重要で、しかもアメリカは世界の頭脳が集まる最も技術レベルの高い国として認められているので当然のことだと思います。また、加えて、フランスには日本人にとって言語的な問題もあります。

世界は多様な思想、文化の協調路線へと進む中で、日本の技術者が日本またはアメリカで学んだものばかりになることは、日本にとっては好ましくありません。チームの構成員が皆同じ能力を持っていることが重視された時代が終わり、チームの中で他人と異なった能力を持つものが重宝される時代が来ます。日本においては不足しがちな、フランスひいてはEU加盟国で学ぶ学生の重要度が上がっていくと考えられます。

自分の経験から、新しい言語の習得は何とかなることや、異国での生活も何とかなるんだと言うことを他人から学んできました。僕自身、他人の行動に勇気づけられて、フランスに留学にやってきたと言っても過言ではありません。その経緯を今月ついに書くことが出来ました→「他人のポジティブな行動が自分のポジティブな行動を引き出す」。

このブログの動機が明らかになったところで、このブログのタイトル、URL、著者名に込められた思いを語っておこうと思います。ブログに書きたい内容が決まったのに、最初に決めなければならないものがいくつもあったので、タイトル、URL、著者名と後でも変えられると思い、それほど考えずにつけました。「フランスの日々」はそのまま考えなしにつけましたし、URLはそのフランス語訳です。『Mes etudes en france(メ ゼチュッ オン フランス)』と読みます。また、名前は誕生日である5月25日の聖人(Sainte Madeleine-Sophie Barat)の名前を頂いています。こちらのサイトで確認してつけました→「Nominis - Saints, Fêtes et Prénoms du 25 mai」。普通の日本人なのに西洋風の名前を付けるなんてかぶれてるとか思われそうなので変えてもいいのですが、代わりも見つからないので今のところ、全て最初に決めたままになっています。これからもこのブログをよろしくお願いします。

今月のアクセス数の上位10のエントリです。
  1. [まとめ] フランスと海外のマンガ人気
  2. フランス語の勉強の仕方(まとめ)
  3. 世界にいい影響を与える国:ニッポン
  4. フランスのマンガ人気
  5. フランス人から見た日本特集『Un oeil sur la planète: Japon : le reveil du sumo ?』(2/2)
  6. フランス人から見た日本特集『Un oeil sur la planète: Japon : le reveil du sumo ?』(1/2)
  7. フランス語の勉強の仕方
  8. 国民総かっこよさ(Gross National Cool)とは
  9. 日本人はなぜ悲観論が好きか
  10. 日本文化エロネタに対するフランス人の反応
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Paris, France
今月は、投稿エントリは15と過去最低でしたが、先月からほぼ横ばいの約17000アクセスでした。4月にブログを開設して、初めて登録フィード数が100を越えた日が2度ほどありました。登録していただいている方ありがとうございます。

また、今月は8ヶ月目にしてやっと、このブログを開設した動機である「[まとめ] フランス留学のススメ」を書き終えました。このブログは、日本からフランスに留学している理系の学生が少ないのは、フランスに留学に来る利点が正しく伝わっていないからじゃないかと思いたって書き始めました。普通の研究者、技術者になりたい学生は日本の大学に残るか、アメリカに留学すると思います。日米の関係は日本にとって最重要で、しかもアメリカは世界の頭脳が集まる最も技術レベルの高い国として認められているので当然のことだと思います。また、加えて、フランスには日本人にとって言語的な問題もあります。

世界は多様な思想、文化の協調路線へと進む中で、日本の技術者が日本またはアメリカで学んだものばかりになることは、日本にとっては好ましくありません。チームの構成員が皆同じ能力を持っていることが重視された時代が終わり、チームの中で他人と異なった能力を持つものが重宝される時代が来ます。日本においては不足しがちな、フランスひいてはEU加盟国で学ぶ学生の重要度が上がっていくと考えられます。

自分の経験から、新しい言語の習得は何とかなることや、異国での生活も何とかなるんだと言うことを他人から学んできました。僕自身、他人の行動に勇気づけられて、フランスに留学にやってきたと言っても過言ではありません。その経緯を今月ついに書くことが出来ました→「他人のポジティブな行動が自分のポジティブな行動を引き出す」。

このブログの動機が明らかになったところで、このブログのタイトル、URL、著者名に込められた思いを語っておこうと思います。ブログに書きたい内容が決まったのに、最初に決めなければならないものがいくつもあったので、タイトル、URL、著者名と後でも変えられると思い、それほど考えずにつけました。「フランスの日々」はそのまま考えなしにつけましたし、URLはそのフランス語訳です。『Mes etudes en france(メ ゼチュッ オン フランス)』と読みます。また、名前は誕生日である5月25日の聖人(Sainte Madeleine-Sophie Barat)の名前を頂いています。こちらのサイトで確認してつけました→「Nominis - Saints, Fêtes et Prénoms du 25 mai」。普通の日本人なのに西洋風の名前を付けるなんてかぶれてるとか思われそうなので変えてもいいのですが、代わりも見つからないので今のところ、全て最初に決めたままになっています。これからもこのブログをよろしくお願いします。

今月のアクセス数の上位10のエントリです。
  1. [まとめ] フランスと海外のマンガ人気
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  3. 世界にいい影響を与える国:ニッポン
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  6. フランス人から見た日本特集『Un oeil sur la planète: Japon : le reveil du sumo ?』(1/2)
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  10. 日本文化エロネタに対するフランス人の反応
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